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007



 坤と伊綱がやって来ると、早速食事が始まった。
 子供達が食べている最中も、ギャンギャン騒いでいる為、まるで小さな宴会のようだった。騒いでいるのにも拘らず、誰も注意しないのは子供達の気持ちを考慮しているからだ。
 風花や菜月(特に風花)に食事中ずっとベッタリで「明日も泊まる?」「遊べる?」「あさっては?」とまた弾丸のような質問攻めを喰らうことになる。
 
 そんな子供達も時間が経ちにつれ眠気が襲ってきたのだろう。
 夜が深まる頃には仲良く眠りこけていた。


 オレンジジュースを飲みながら、風花は微苦笑した。


「はしゃぎ過ぎだっつーの。でも、元気そうで良かったよ」
「そうだね。あ、すみません。坤さん」
「いや……それにしても、イケる口だな」
「あははは、どうも」
「強いな」

 坤に焼酎を注いで貰っている菜月は「そんなに強くないですよ」と笑っている。
 嘘付け、と風花は心の中でツッコミながら空になっているとっくりに目を向けた。

 何本飲み干しているか分からないが、菜月は酔っている素振りを見せない。
 少しテンションは高い気がするが、それでも普段と然程変わらない。自分は酒を少し飲んだだけでも、酔っ払ってしまうというのに。


 しかも、酒、あまり美味しいと思ったことがない。


 伊綱に「飲ませ過ぎないように」と注意されると、坤はぶっきら棒に「ああ」と返事をして酒を飲んでいた。
 
「菜月も飲み過ぎないようにね。未成年だし」
「失礼な。俺は20歳だよ。今年で21歳」
「っつーか、どうしてそこまで強いわけ?」
「さあ。あ、じいさまの影響かも。じいさまも酒飲みでね、俺、ちょこちょこ貰ってた」
「あんたみたいな酒の強い奴。“へび”って言うんだよ。ン? “おろち”だっけ?」
「風花さん。風花さん。“うわばみ”ね。うわばみって『蛇』意味合いがあるけど、この場合は違うから」

 どっちでもイイとばかりに、風花が稲荷寿司を口に放り込む。
 子供達に毛布を掛けてやっている伊綱に気付き、風花が話を切り出した。

「上手くいってる? ガキ達と」
「ええ。それこそ、暮らし始めた当初は子供達に警戒心を抱かれっ放しでしたが……今はだいぶん」
「なら良かったです」
「ですが、坤も伊綱も、まだまだでございますよ。子供達もそうです」
 
 ちとせが厳しく指摘してくる。
 どういうことなのかと訊ねれば、ちとせは「遠慮し合っているのです」とキッパリ言い切った。
 




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あきゅろす。
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