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004




「だからコン太郎がわるいんだろ!」


「ちがうっ! コン次郎がわるーい!」


「け、けんかしないでよぉ」
  
 
 喧しい声を上げながら、旅館の中に入って来たのは3人の仔ギツネ。
 相も変わらず長男と次男は喧嘩ばかりしているようだ。

 喧嘩しながら入ってきた3人をちとせが「3人とも」と嗜める。

「お客様がいるのですよ」
「だっておばーたま!コン次郎がぁ」
「ぼ、ぼくはわるくないもん」
「あー! コン三郎、ひとりだけにげるなんてズルーイ!」
 
 風花と菜月の存在に気付かず、兄弟喧嘩を勃発させる仔ギツネ達に笑ってしまう。
 ギャーギャー喧嘩している仔ギツネ達に、風花が「コラ」と声を掛けた。


「喧嘩してると、あたし帰っちゃうぞー」

「え? っ、ああああああ! かーたま! かーたまだぁ!」

 
 コン太郎が絶叫し風花を指差す。
 刹那、破顔してコン太郎は風花に飛びついた。ズルイとばかりにコン次郎も風花に飛びつく。
 コン三郎が自分もしたいけど、とオロオロしていると菜月がコン三郎を抱っこした。自分だけ仲間ハズレにならなかったことにコン三郎は安堵しているようだった。


 風花もコン太郎とコン次郎を抱き上げて「元気だった?」と笑いかける。


「相変わらず、あんた達、喧嘩して。困った奴等だねぇ」

「それはコン太郎がー!」
「ちっがう! コン次郎が!」

「だーかーらー、喧嘩するんじゃないって」

「コン三郎は元気だった?」
「げんきー。とーたま」

 
 仔ギツネ達は変わらず元気なようだ。
 はしゃぎまくる仔ギツネ達は、風花達がやって来ることを知らなかった為、興奮しっぱなしだ。しかも弾丸のように「遊びに来たのか?」「お泊りするのか?」「今日帰っちゃうのか?」等々、風花達に質問の答える暇を与えない程、質問をした。

 伊綱が困ったような顔をして「コラコラ」と子供達の気持ちを落ち着かせようとする。
 子供達はそれでも興奮が冷めないようで、耳と尻尾がひょっこり現れている。
 喜ばせるように菜月が「泊まるよ」と言えば、子供達の尻尾がぶわりっと膨らみ、耳をピクピク動かしている。


「お泊りするから、お部屋に案内してもらってイイかな?」


「うん。ぼく、あんないする! とーたま、おろして」

「あ! ぬけがけはダメだかんなー!」

「おいらだって、あんないするやい!」


 腕から抜け出し子供達が地に下りると2人の手をそれぞれ引っ張って案内すると主張する。
 坤が仕方無さそうに「案内を頼むぞ」と子供達に言えば、声を揃え元気良く返事をしていた。どうやらこっちの家族の関係も順調のようだ。思わず菜月と風花は安堵したように笑みを浮かべた。





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