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「ネイリーさんはいつだってキザなんですね」


   
 * *

 
「あれから、ネイリーさんは何度か私に会いに家まで来てくれましたよね。沢山の薔薇を抱えて」

「君が実家に帰るまで、何度もお邪魔させてもらったな。実家に帰ると聞いて別れが辛かったよ」

「うふふっ。ネイリーさんったら」

「ホントだぞ。君のような女性とお別れなんて」
 
 ウィンクするネイリーにみずほが笑った。
 歩道橋の下では車が唸り声を立てながら道路を走っている。バイクやトラックも度々見かける。
 みずほはそれを眺めながら言った。

 
「ネイリーさんと出逢って、何度か会ってお話して……最初は死のうと思っていたのに、何だか自然と死に対する考えが変わってきました。そして、実家に帰って、数日後。私のお腹の中に赤ちゃんがいることが分かりました。最愛の人と私の間にデキた子です。ネイリーさんは私だけではなく、あの子も救ってくれました。恩人です」

「恩人と呼ばれるほどのことはしてないさ。それに君は僕とデートしてくれたしな」

 
 みずほとネイリーはデートというデートはしていない。
 それでもネイリーはデートしてくれたからどっこいどっこいだと笑う。ネイリーらしい返答にみずほが笑った。そんなみずほに「よく笑うようになったな」と肩を叩いて手摺に寄り掛かる。

「みずほくんにピッタリではないか。その顔。僕は1番好きだな。君のその顔」
「笑えるようになったのはネイリーさんのおかげです……私、ネイリーさんにもう1度会ってお礼を言いたかった。だから、今日、あの店でネイリーさんを捜してもらおうと」


「じゃあ、お礼代わりに聞かせてくれないか?」

「え?」


 お礼を言おうとするみずほに、ネイリーが微笑する。


 今、死をどう思っているかを。


 みずほは不意を突かれてしまったが、フッと笑みを浮かべて微笑んだ。

「おかげさまでとっても恐いです。死んじゃうこと。だから、あの人の思い出と一緒に私は生きていきます。意地でも」
「なら、良かった。僕はその返事だけで充分さ」
「キザですね」
「褒めてくれて光栄だよ」
 
 2人は歩道橋から見える景色を眺める。
 全く変わっていないとはいえないが、それでも歩道橋から見える景色はあの時のままだ。





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