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01-06

 

「つくづく人間っちゃー変だよねぇ。変」長い揉み上げを弄くりながら、女店員は肩を竦めて見せた。

嫌味を含む物の言い方と上から目線に、やや癪に障る。可笑しいだの変だの言うが、自分だって人間ではないか。
普通の人間よりも優っています、そんな物の言い方をしないで欲しい。

この女店員とは絶対気が合わない、あかりは心中で毒づいた。

直後、「風花。ダメでしょ」菜月が風花を窘(たしな)める。注意され機嫌を損ねてしまう風花は、ツーンと菜月にそっぽを向いてしまった。
 

「もぉ、風花は。すみません、あかりさん。風花も悪気があるわけじゃないんです。気にしないで下さいね」

「ぜ、全然…気にしていませんのでお気遣いなく」
 

本当はすっごく気にしてます。文句を言ってやりたいほど、ものすっごい気にしてます!
 
しかし、それを口にすれば話がややこしくなるため、あかりはグッと堪えて愛想笑い。引き攣り笑いになっていないことを願った。

「話は戻しますがー…」菜月は遠慮がちに依頼について尋ねてくる。彼の表情が一気に曇ってしまったのは気のせいではない。

風花は受け入れると言ったが、やはり簡単に受け入れられないのでは。

躊躇いながらも、あかりは自分の身に降りかかっている悩みについて、そっと語り始める。
 

「始まりは一週間ほど前になります。その日、私は英語のミニテストが悪くて、放課後に居残りをさせられていました。ノートに英文と和訳を10回ずつ書いて提出したら帰れるというものだったんですけど、私、他の人よりも書くペースが遅くて。
気付いたら私以外、教室には誰もいませんでした。みんなやり終えたんだ…と、思ったその時です。突然、教室のドアが閉まりました」


誰かの悪戯とは思ったんです。
 
でも人の気配なんて無いんです。確かめて見に行ったんですが、そこには誰も、付近にも誰もいませんでした。

不気味だと思いながら席に戻ったら、今度は開いていた筈のノートが閉じられていました。開きっぱなしにしていた筈、しかも教室には誰もいない。

風でノートが閉じた?

そんなわけありません。
私のノートの表紙は厚紙、突風でも吹かない限り、閉じてしまうような軽さじゃないんです。


「嫌な感じがして、すぐ教室から出ようと思い立ちました。英語は図書室でやればいい。自分に言い聞かせながら、片付けを始めました。すると今度は机上に転がっている消しゴムが、すーっと動き始めたんです。私の手を避けるように。
まるで消しゴムが意思を持ったかのようでした! アリエナイ…、思った矢先に声が聞こえてきました」

「声?」


風花が確認するように聞き返す。あかりは頷いた。「声です。しかも笑い声」


「どこからともなく聞こえてくる笑い声は……私の声に変わりました。教室いっぱいに声が響いて、それが気味が悪くて悪くて、私、鞄を持って教室から逃げたんです。英語のことなんて頭から吹っ飛んでいました」
 
 
その日を境に奇妙なことばかり起きました。

授業中、勝手にノートが閉じたり、消しゴムがひとりでに移動しようとしたり、どこからともなく笑い声も聞こえるんです。

でも不思議なことに、声は私がひとりになっている時にしか聞こえないんです。
誰かと一緒にいたり、私の周りに人がいると、声はパッタリ…。
 

「もしかしたら霊に憑かれたんじゃないかって考えたんですけど、それにしては奇妙なことが起きてばっかりだし。どう対処すればいいのかも」

「オーケー。話は分かった。んじゃ、今日の夜九時、あんたの学校前で待ち合わせしよう。通ってる学校名教えて」

「へ?」


「なにマヌケな顔作ってるわけ? 今夜、あたし達が“怪奇現象”を調査してやろうって言ってんの。早め早めに解決した方がアンタもいいだろ?」
 
 

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あきゅろす。
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