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06-09


  
 腕組む少年は困った…、と項垂れる。

 小鬼の悪戯なのだからいつかは術が解けるだろうが、その“いつか”が問題。
 今日中に戻れるかもしれないし、明日以降になるかもしれないし。

 すると鳩尾を擦っていたネイリーが、大丈夫だと爽やかに(本人はそのつもりだろう)笑ってみせた。

 
「僕は吸血鬼だからな。感じることは得意だ」

「あ、そうですよ。なつ…じゃなかった風花さん。ネイリーさん、風花さんだって、いばらさんだって、魔力を感じ取って悪魔だって見破りましたよ! ネイリーさんがいるじゃないですか!」

「フッ、任しときたまえ! なつ…じゃない、フロイライン! 僕に掛かればすぐ影鬼を見つけることができるぞ! ちなみに先程から影鬼、見つけているのだが」
 

 ニコニコしながら、サラッと重大なことを告白してきた吸血鬼に二人はカチンと固まる。彼は少年の影を指差し、次にテーブルの下にもぐってしまっている悪魔の影を指差した。

「君たちの影にいるぞ」

 ヒクリと片頬を強張らせ、少年はネイリーの胸倉を掴み、必死に怒りを抑えながらガンを飛ばす(恐い…目が充血気味!)。
 
「あ、あ、あんたねぇ…、そういう大事なこと、なんでさっさと言わないわけッ。ぶっ飛ばされたいわけッ」

「ぶっ飛ばすはフロイラインの愛情。僕はいつでも受け止めるぞ! カッコイイな僕。フロイラインの拳を愛と感じるとは」
 

「やっかましい! マゾまがいな発言はやめろっつーの! で、影にいるわけ?! 小鬼、この場にいるわけ?!」
 

 詰め寄る少年の質問に頷き、ネイリーは彼(彼女?)の手を放させると、フッと前髪を靡かせサーベルを召喚する。
 薔薇の模様が入ったサーベルの異名は紅薔薇。刃に薔薇の模様が彫られている。

 ネイリーは少年の影に狙いを定めると、勢いよくそれを振り下ろそうとした。
 

 瞬間、『鬼殺しー!』悲鳴が上がり、中にいた小鬼が飛び出してきた。ビィビィと喚きながら出てきた小鬼の体の色は青。1本角の青鬼、カゲぽんだ。相方の悲鳴を聞いて悪魔の影から飛び出してきたのは二本角の赤鬼、カゲっぴ。

 風花(※しつこいようですが菜月です)は鬼の出現に悲鳴を上げ、頭をテーブルに打ち付けながら飛び出した。

「鬼が出たぁあああ!」

 半べそで少年の背に隠れてしまう。いやはや、鬼を恐がる悪魔は何とも可愛らしい。可愛らしいと思い込んでおく。
 
 現れた二匹の小鬼は手を取り合い、自分達を見上げてきた。


『なに危ないことしてくれるんだよー! 怪我したらどうするんだ! 恐い大人達だじぇ!』

『大人気ないっちゅーの! 反省しろー!』


 『酷い酷い!』連呼してくる小鬼に菜月(※しつこいようですが風花です)は喧しいと床を大きく踏んだ。

 二匹の小さな体は振動でピョンと跳ね上がり、仲良く床に転げてしまう。
 小生意気な反論をしたかったのだろうが、菜月の険悪な表情に小鬼達は怖じてしまい、その場におとなしく正座した。

「素直で宜しい」

 フンと鼻を鳴らし少年もその場で胡坐を掻いた。あかり達もしゃがんで小鬼達と視線を合わせる。

 あかりと目が合った小鬼達は、仲良く人を指差してきた。


『また会ったな! 小娘!』

『トロい娘! また会ったな!』


「あらぁー…あの時はどうも。よくも私の影に入って悪戯してくれましたね。お礼に鍋に放り込んで食べてあげたいですよッ、この馬鹿小鬼!」

『お、鬼に馬鹿言うなー! 馬鹿って言った奴が馬鹿なんだじぇ! てかッ、カゲっぽん達を食べたい?! 小娘、お前! 山姥だったのかー?!』

『人間の皮をかぶった山姥め! カゲっぴ達のことを恐がってたくせにー!』


「誰が山姥ッ、あー腹が立ってきました! 一発くらしますッ、くらしてやりますからねぇえええ!」

 
『ギャァアアアア! 目がマジだっちゅーの!』

『殺されるー! 食われるー!』


「ま、まあまあ。あかりくん。子供の戯言だから」
 
 



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