1-4
「お客さん扱いじゃなくて、同居人扱いなんだよな?」
「ええ、そうですよ」
「あー!敬語になってる!昨日は、タメだったじゃん!」
「ごめんごめん。癖でさ。そうだね、今日から同居人さんになるんだから、風花の必要な物買いに行かなきゃ。ベッドとか、衣類とか」
「だねえ。あたし、ローブしか持ってないし。買い物かー、人間界で買い物なんて初めてさ!」
はしゃぐ風花に苦笑していると菜月があることに気付く。
風花の翼だ。
さすがに、翼は目立つ。
髪の色でさえ目立つのに翼は余計目立って街中を歩けない。
菜月が指摘すると、風花が腕を組んで説明してくれる。
人間の姿にはなれるらしい。
ただ、魔力がもう少し回復しなければ人間の姿にはなれないそうだ。
「明日の正午過ぎには、完全に回復すると思うんだけど。人間界に来るまで魔力、結構使ったからなぁ」
「じゃあ明日のお昼過ぎにでも、風花が元に戻れたら一緒に買い物に行きましょう」
「また!」
脹れた顔をして風花が菜月の口調を指摘する。
「ごめんー……昨日まで、敬語だったから俺も慣れてないんだって」
「ま、ゆっくりと、仲良くしようじゃないの」
「だねーッ、な、ななななな!何してるの!」
寝巻きを脱ぎ始めた風花は、キョトンとしている。
自分のやっている行動を見て「何ってー」と、言葉を漏らす。
「ローブに着替えようと思ったんだけど?寝巻きよりローブの方が、動きやすいし」
「うわわわわわっ!俺の前で着替えないで下さい!すっ、すぐに出て行きますから!」
「えー?べつに、見ても減るもんじゃ」
「そんな問題じゃないです!少しは恥らって下さい!俺は男です!」
転がるようにベッドから下りて、菜月が寝室を出て行く。
全力疾走で出て行く菜月に、風花は呆然としていたが吹き出し爆笑していた。
寝室を出た菜月は笑い事じゃないとばかりに、閉めたドアに寄り掛かって座り込む。
朝っぱらから、焦りっぱなしだ。
しかも、自分に女性という免疫力がないから、こんなに焦る。
「大丈夫かな……女性と暮らすなんて」
頬を紅潮させ、菜月は額に手を当てた。
女性と接した経験は全くと言ってイイほどないのだから。
深い溜息をついて、菜月はこれから一緒に暮らしていく不安や心配を感じていた。
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