0-2 肌に感じる雨は氷のよう。 骨の髄から凍ってしまいそうな冷たい雨は、酷く孤独感を感じさせてくれる。 歩く度に跳ねる水を気にしながら、いつもの路地裏を通って帰る。 人気のない路地裏は、此処を通って襲われるという心配も無い。誰が居るわけでもない。 そう思っていたけれど。 足を止めた。 俺は今、とても驚いた顔をしていると思う。 しかも驚いて小さく悲鳴を上げてしまった。 理由は路地裏の隅っこで、膝を抱えその膝に顔を埋めている人を見つけたから。 その人の背中には、真っ黒な翼が生えていた。 銀色の髪を雨に濡らし、膝を抱えている、女性。 その人は悪魔なのだと、すぐに分かった。 ピクリとも動かない悪魔は、俺の気配に気付いている筈なのに警戒すらしない。 俺は思わず家に走って帰った。恐くて走ったわけじゃない。 ただ、彼女が濡れていると分かって、タオルを取りに行かなければと思った。 他人なのに、こんなことを思うなんて俺にしては珍しい。 [*前へ][次へ#] [戻る] |