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002

  
 
「でしょう? 兄さま。兄さまも、俺をコロしたんですよね? ケしたかったんですよね」


「……ちがっ…」
「チガウ? そうでしょう。だって、たすけてくれなかったじゃないですか。それどころか」


 俺ヲ、殺シテ、喜ンデイマシタヨネ?


 怖じるほど綺麗に笑って笑顔で弟が俺に言ってくる。
 
 次第に弟のローブが赤く染まり始めた。真っ赤に染まっていく真っ白なローブ、明らかに鮮血だと分かった。
 ふと俺の右手を見れば、毒々しい赤。俺の手は血塗られていた。手にはナイフが握られている。いつの間に、こんなもの。
 
 
「オドろかなくてもイイじゃないですか。それ、兄さまが望んでやったんですよ」
 
 
 う、そだ。
 嘘だ。うそだうそだうそだうそだ!

 俺は、これで弟を刺したってのか?! いつッ? さっきまで、こんなの……っ。
 目を白黒させてナイフを見つめていると、弟が俺の目の前に歩み寄ってきた。しゃがんで血まみれの右手を両手で握り、誘導してくる。

「簡単です。ホラ、こうやって」

 弟が刃先を自分の喉元に突きつける。弟の喉元からは、血が一筋流れ落ちた。
 

「馬鹿っ、何してるんだっ、やめッ、やめろ!」
  

 俺はこんなことしたくねぇっ、傷付けたくねぇっ、目の前の弟を殺したくなんかねぇ。そんな非道なことデキる筈ねぇんだ! けど俺の体はちっとも言うことを聞いてくれない。ナイフを握り直している右手は他人の手みてぇだ。


「少し力を込めるんだけでいいんです」
 

 いや、だ。

 嫌だいやだいやだいやだいやだいやだいやだ! こんなことしたくねぇ! 俺は振り絞って声を上げた。
 相変わらず弟は笑っていた。瞬間、刃先が喉元に突き食い込んだ。返り血が俺に容赦なく襲い掛かる。顔に掛かった血を拭うことも出来ず、俺は呆然と崩れ倒れてくる弟の体を見つめた。

 スローモーションがかかったように、ゆっくり崩れる弟が微笑んできたのを垣間見る。


 コレデ、満足デスカ? 兄サマ―――。




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あきゅろす。
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