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017


「聖保安部隊に就く、とはどういうことにございますか? 俺は“聖の罰”を受ける身。聖保安部隊という名はもう語れぬ身にございますが」

「貴方は“聖の罰”を受ける対象から外されました。何故ならば、中央大聖堂事件の真相を公(おおやけ)にしないのですから。今回中央大聖堂事件に関わった者達の名は全員伏せることになっているのでございます。それに事情により“聖の罰”は受けられない状況。貴方を“聖の罰”にはかけられません」

「しかしながら菊代さま! 俺は聖界に叛きました。重罪を犯したのです。簡単に赦されることではありません。俺の犯した罪は消えないのです」
 
 それなのに何食わぬ顔で聖保安部隊に再び就くなど、赦されるわけないではないか。
 郡是は菊代の言葉をすべて拒み、罰を受けると申し出た。仮に“聖の罰”にかけられなくとも、何らかの形で償いはしなければならない。部下の分まで償わなければならないのだ。
 
 「貴方ならばそう言うと思いました」変わらず穏やかな声で言われ、郡是はそっと菊代を見つめた。
 
 
「貴方は責任感の強い天使。きっとそう言うと思いました。ですが、郡是。貴方は北大聖堂事件の事実を知って、何をすべきか考えて行動を起こした。四天守護家の判断は誤謬(ごびゅう)だと、貴方なりに考え決断を下した。違いますか?」


「結果的に俺は聖界に背を向けたのです。聖保安部隊でありながら……罪を犯したのです」
「では私も罪を犯しました」
 
 呼吸を忘れて郡是は目を削いだ。
 
「な、何を仰りますか! 菊代さまが罪を犯すなど」

「長であるのにも拘わらず、私はユベル・ヴェーテンの目論見を見抜けなかった。それどころかユベルの思惑通りに事を進めてしまったのでございます。そのせいで今回、どれほどの犠牲者が出たか。郡是、貴方が起こした罪と私の背負うべき罪、差などないと思いませんか?」
 

 それでも私は長として立っています。


 それは私を必要として下さる者がいるからでございます。私自身もまだやるべきことが残されているからです。残された中に犠牲者への贖罪も含まれています。罰を受けるだけが道ではないのでございます。
 確かに貴方の起こした行動は聖界にとって赦されないこと。ですが、すべてが赦されないことかと問われたら、私は綺麗に否定させて頂きます。


 郡是、罪を償う形とは罰を受けるだけではないと思いませんか。
 
  
 菊代は困惑している罪人の肩に手を置く。
  

「貴方は隠れ村から必要とされています。貴方の身を案じる者も沢山います。私自身も貴方のような天使を失うこと、とても惜しく思うのでございますよ。なにより郡是忍、貴方はまだやるべきことがございます。一度護ると決めた者達の村を、護らなければならない使命がある。貴方がやらずに誰が背負う使命でございましょう?」
  
 
 目を白黒させている郡是に、大女神はこれ以上にない慈愛溢れた微笑を向けた。



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