名は聖保安部隊 聖界が誇る四天守護家直属の隊、名は聖保安部隊。 民の為に武器を手にし、民の為に身を捧げ、四天守護家と共に聖界の治安と秩序を護る隊。一般の天使や聖人ならば、一度は憧れる隊だ。 何に1番憧れを抱くか、それは四天守護家と共に聖界を護ることだ。 一般人はどう努力しても四天守護家にはなれない。四天守護家になれるか、なれないかは、この世に生まれてきたその瞬間でそれは決まる。四天守護家に憧れを抱き、自分も聖界の先達立場に立ちたいと思っていても、生まれたその瞬間に決まる身分はどうすることもできない。諦めることしかできないのだ。 しかし、先達立場に立てなくても四天守護家と共に聖界のために身を捧げる職がある。 それが聖保安部隊。四天守護家直属の隊。聖界を護る誇り高き部隊。 幼き頃、社会見学の一環として聖保安部隊の仕事を見学しに行ったことがあった。 訓練をしているところを眺めるだけだったが、見学していた誰もが聖保安部隊に憧れを抱いた。躾けられたホーリードラゴンに命を下しているのは誰よりも早く敵のもとへ行くため、走り込んでいるのはいざという時に己の足で敵のもとへ行くため、そして武器を手にするその姿は誰かを護るがため。 誰かを護るため、聖界を護るため、聖保安部隊の訓練するその姿に憧れないわけなかった。 いつか自分もあの部隊の一員として誰かを護りたい。この手で誰かを護り抜きたい。 純粋な憧れはやがて一つの夢となり、それを実現するために努力しようと決断する。 聖保安部隊に入れるのはほんの一握り。 一握りに選ばれるために郡是は時間を惜しまなかった。暇さえあれば体力を作ったり、聖保安部隊に入るための知識を蓄えたり、周囲が遊びに夢中になっている間も努力を惜しまなかった。努力を惜しめば選ばれる可能性など皆無なのだ。 自分にいつもそう言い聞かせていた。 そんなある日、聖堂の訓練場でバスターソードを振っていたら聖保安部隊の青年が訪れに来てくれた。 日々自分が努力していることを教師が聖保安部隊のひとりに話してくれたようで、忙しい仕事の合間を縫って自分の姿を見にやって来てくれたのだ。 来てくれた聖保安部隊の青年は自分に武器の構え方、攻撃をする時の姿勢等々を丁寧に教えてくれた。それだけでも感動だったというのに、皆には内緒だと言って自分をホーリードラゴンに乗せてくれた。 指笛で指揮を取る聖保安部隊の青年は「今のうちに指笛もできるようになっとけよ」と笑いかけてきた。 「俺はこの指笛がなかなかできなくて、最初の頃はドラゴンに乗らせてもらえなかったんだ」 「指笛ができないだけでですか?」 「ホーリードラゴンを指揮するのは全部指笛だからな」 「普通の笛ではいけないのですか?」 素朴な質問に青年は口角をつり上げた。 「いい質問だな。じゃあ郡是、ちょっと想像してろ。ホーリードラゴンに乗っていると敵襲にあった。突然の襲撃に笛を落としてしまったら」 「落とさないように、笛を首から提げておくとか」 「襲撃で紐が切れるかもしれない。笛が壊れて鳴らなくなる可能性もある。何より首に提げている笛を掴んで口に銜えるまでの数秒と、指を銜えて鳴らす数秒とじゃ、後者の方が断然時間が掛からない。数秒の差だが、その数秒が命取りになる。だから指笛がいいんだ。分かるか? 郡是」 [*前へ][次へ#] [戻る] |