6-13
「なんか、変わったな。林道」
「だろ?あたしと菜月、知り合ってもう3年経つんだ。凄くない?」
「そんなに長く続いてるのか?!北風ともあろう悪魔様が?」
素っ頓狂な声をあげる麻人に風花は脹れた。
「なんだよ。そういうあんたも、小波って子と知り合って長いんじゃないの?」
「分かるんですか?」
「雰囲気で分かるよ」
「私と麻人さん、知り合って……2年なんです」
曰く、麻人が人間界に来て、宛てもなく彷徨っている時に小波に出逢ったそうだ。
その出逢いは、本当に偶然で麻人自身すぐに、サヨナラするだろうと踏んでいた。
しかし、気付けば、寄り添う仲になっていた。
彼女に出逢ってからは、ナンパもスッパリと止めてしまったと話す。
「不思議だよなぁ。俺様ともあろう悪魔が、大好きだったナンパをヤメるなんてよ」
「全然不思議じゃないよ。あんたにとって、小波が必要な女性だって思った。だから、ナンパを絶った。それだけのことだろ?あたしも同じさ」
「かもな。今じゃ、ナンパする気も起きないんだぜ」
先程とは打って変わって穏やかな雰囲気が流れる。麻人もあまり風花を恐がっていない。
それが菜月には嬉しかった。笑みを浮かべお冷で喉を潤した。
ふと、菜月は店のカレンダーを見つける。カレンダーの隅っこに走り書きで何か書いてあった。
目を凝らして見る。カレンダーには『結婚式』と書き込まれていた。
菜月は小波にカレンダーに書いてあることを訊ねる。
すると小波は顔を赤くして麻人を一瞥するとさらに顔を赤くした。
風花は「あんた達、結婚するの?!」と麻人に負け時と素っ頓狂な声を上げた。麻人はばつ悪そうに頷く。
「その、自分達だけで式するんだけどな」
「なんで?祝ってくれる人、いないわけ?」
「私達、駆け落ち……してるんで」
「か、駆け落ちって大胆だねぇ」
意外とハードな恋愛をしているようだ。
モジモジとしながら小波は事情を更に説明する。
「その、祝ってくれる人がいないのは当然なんです。でも、麻人さん、私の為に2人で式……挙げようって。式はお店でやるんですけど。お店始めたばかりで、友人もいないし、仕方が無い……ンです」
語尾が小さくなる。
本当は誰かに祝ってもらいたいのだろう。
でも、それは我侭だからと小波は我慢しているのだ。
麻人も「人間界には知人がいないからな」と溜息をついた。風花は頭を掻くと頬杖をついて窓の方を見た。
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