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6-12


「俺は魔界にいた頃の風花を知らない。それは仕方が無いことだと思います。だって、俺と風花は人間界で知り合ったんですから。風花が魔界を出てくれなかったら、俺達は永久に出逢えなかった。だけど、麻人さんは俺よりも先に風花に出逢えて、俺の知らない風花を知っている。なんだかそれが、とても羨ましいし、悔しい」


 真摯な言葉に麻人は思わず訊ねる。


「そんなに、林道のこと好きなのか?」

「風花は不器用さんですけど、凄く優しい女性ですよ。少なくとも俺は、そんな風花に助けてもらってばっかりです」

   
 肩を竦めて、菜月が麻人に語る。
 
 もしかして、もしかしなくとも物凄い告白されているのでは?
 しかも、急激に顔が熱くなって火照っているような。

 風花は呆気にとられながらそう思う。
 小波が「好きなんですね」と納得したように微笑み、麻人が信じられないような眼で風花に視線を送る。
 

 風花は言葉を詰まらせながら、菜月に悪態を付いた。


「は、恥ずかしい奴」
「本当のことを言ったまでだよ」

 優しく菜月が言う。
 風花は頭を掻いて「バッカ」と文句を垂れた。

「なんであんたはこういう時に限ってッ、この天然タラシめ」
「麻人さんが俺の知らない風花を知ってるから妬いてるだけだよ」

 フォークを置いてお冷の入ったコップに手を伸ばす。
 柔らかな表情を作る菜月は言葉を重ねた。

 
「昔はどうあれ今は俺と恋人同士なんだから、ノロケ話だってしたくなるんだ」
 

 最高潮に頬を赤く染め、風花は口を金魚のようにパクパク開閉する。
 さっきまで魔界にいた自分の話をされて菜月がどう思うか、自分に失望してしまうのではないか、不安で仕方がなかったのに。
 言葉にならない。そしてどうしようもなく嬉しい。

「ダーリンがこうも、自覚してる……ッ、やばい、泣けてきたし」
「ええええ?!泣かないでよ!」
「だってー!あんた、いつもはそういうこと言わないだろ!もぉ、あたしの努力の結晶!此処まできたのは!」

 頬を最高潮に赤くして、涙ぐんでいる風花に菜月は焦った。
 しかし、すぐに舌を出し風花は微笑した。
 何だか苛立ちが取れたような気がする。怒っていた気持ち、なんかどうでも良くなった。


 驚いているのは麻人だ。


 2人のやり取りを見て、風花に言う。 



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あきゅろす。
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