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6-11


「あのー……麻人さんと林道さんって、もしかして、まだ想い合って」
「違う!小波さんっ、それは違う!」
「ないから!全然無いから!」

 小波の言葉に麻人と風花が全面否定する。
 小波は「仲が良さそうですから」と小声で、モジモジと手遊びをする。


 一体全体、何処をどう見たら仲が良さそうに見えるのだろうか?
 風花は全面否定した。心の底から否定させてもらった。

 その熱意が伝わったのか、小波は安堵した。
 どうやら彼女は、麻人のことが好きなのようだ。麻人もまた「そんなわけない!」と必死に否定する。


 これで確定した。2人は恋人同士なのだ。


 破顔している小波は「まだ注文があればどうぞ」と優しく笑みを浮かべた。

「ご料金、お安くしますから。存分に食べて下さいね」
「なっ、こ、小波さん?!」
「だって、麻人さんの知人さんなら、これくらいしないと。それに美味しそうに食べて下さるから」
「知人ってほどでもないんだけど」
「そうだぞ。こいつ、般若のように恐ぇッ、嘘うそ!」
 
 首を横に振る麻人に対し、風花は片眉をつり上げている。
 脹れ面を作る風花は「表面だけしか見てないンだから」とブツクサ文句を言っている。


 菜月は、風花の魔界のいた頃を知らない。


 だから彼女がどのような生活を送っていたか分からないが、麻人のようにきっと人から恐れられていたのだろう。


 なんだか、哀しいと思った。
 彼女は不器用なだけなのに。


 風花はといえば、かなり機嫌が急降下していた。
 此処で元カレに会うなんて最悪のほかに何も無い!自分を恐がっている麻人を睨んで鼻を鳴らす。

 
 麻人は臆しながら、菜月に対し「林道こういう奴だぞ?」と指差した。
 
 
「何日目か分からないけどな、おススメしないぞ。魔界ではな、スッゴクッ、うわっつー!物を投げないでくれ!それ、店のコップ!店の備品!」
「余計なこと言うからだよ!菜月にこれ以上、あたしの過去を言うなっつーの!」
「なんだ、もしかして今、猫かぶってるのか?林道」
「ンだって?」
「いや、ジョーダンです」

 関節を鳴らす風花に、麻人が笑顔を作って冗談と頬を掻いている。
 菜月はパスタを口に入れると麻人に微苦笑した。

「貴方が羨ましいです。麻人さん」
「……はい?」

 何故に羨ましいと思われるのか麻人には分からなかった。
 構わず菜月は言葉を続ける。



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