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6-10


「あんたまで、人間界にいるとはね。いばら以上に驚いたよ。塩峪」
「ッ、歪な悪魔もいるのかよ!この平穏な人間界に、なんで最凶の女と謳われた“魔界の3妖女”のうちの2人がいるんだ!」
「蔓草も人間界にチョクチョク来るよ」
「嘘だろッ、いや……呪縛の魔女は付き合ったことねぇけど」
「え?ということは」
「こいつ。いばらとも付き合ったことあるんだよ」
  
 親指で麻人を指し、風花は鼻を鳴らす。菜月は「そうなんだ」と相槌を打った。
 別に驚くことは無い。

 いばらだって、そういう風に誰かと付き合ったことあるだろうから。
 麻人は思い出したくも無い!と顔を青くした。
 
「魔界の3妖女と付き合うと、金がすぐに吹っ飛ぶ!容姿はイイケド、いやっ、マジ人使い荒い……そこの能天気そうなお前!今、林道の彼氏だろ?すぐ破産するぞ!ザマーミロ!」
「何故に『ザマーミロ』って言われてるんだろ?俺」
「うっさいね!黙りな!菜月に変なこと言うな!」
「ッ、恐ぇ。お前、相変わらず恐ぇ」

 逃げ腰になっている麻人が、冷汗を流しながら風花を見つめる。
 風花はツーンとツッパっていた。雰囲気が刺々しい。


 普段の風花とは少し違う、菜月はそう思った。

 
 この空気は風花と出逢った頃のような刺々しい雰囲気。
 小波が恐る恐る麻人と風花に、どう知り合い恋人になったのかを訊ねる。


 2人は眉を顰め、腕を組んで唸り声を上げた。

 
「どうって、あたしがたまたま麻人にナンパされて」
「そうそうナンパして、ノリで付き合ってっつったら」
「あたしがOKした。3分も掛かってないな、あの出来事」


「あははは、とても分かりやすいね」

 
 というか、ノリで付き合えるものなんだ。
 
 恋愛経験が全く無い菜月にとって、不思議でならない話だったがそれも恋愛に入るのだろうと納得することにした。疑問をこれ以上持っても仕方が無い。
 経緯を聞いた小波は、顔を渋めてさらに訊ねる。

「どれくらいお付き合い……したんですか」
「ンーっと、1週間?」
「いや、4日と半日だ!その間、お前ときたら、俺にどれだけ物を買わせた?」
「その代わり、あんたのことを追っていた借金取り蹴散らしてやっただろ?だから、お互い様」
「ウッ……そりゃそうだけどよ。ある意味、お前も借金取りのようなッ、睨むなって!」

 ビクビク怯える麻人に向かって、風花は睨みを鋭くする。
 菜月の前で過去の自分を云われたくないのだ。


 今の好きな奴に、悪く思われたくない。絶対に。ぜったいに。


 2人のやり取りを見ていた小波が少し不安な顔を作る。
 


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あきゅろす。
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