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“Sea Breeze”


 駅に到着した2人はさっさと切符を買って電車に乗り込む。
 菜月はグッタリと座席に座り「なんであそこで会っちゃったんだろう」とボソボソ呟いている。かなり照れているようだ。


 隣に座った風花は「イイじゃん!」とかなり嬉しそうだった。

 
 自慢できたのが、本当に嬉しかったようだ。


 暫く電車に揺られていると、窓から海が見えてみた。


 冬の海はグレーというイメージがあるが、今日は晴れている為、海が青々していた。
 風花は目を輝かせ、早くレストランに行きたいとはしゃぎ始めた。


 本当に子供のようだ。菜月は微笑し、風花と同じように早くレストランに行きたい、と思った。

 それは彼女の喜ぶ顔が見たいせいだと、心の底から思った。


 電車に揺られ、降りる駅で降りると2人はレストランに向かってのんびり歩き始めた。
 噂のレストランは本当に海の近くにあった。
 真っ白な砂浜が向かい側にあり、海が綺麗に見える。

 外見から見ただけだが、雰囲気の良いお店で、同じお店を経営している者としてお店の雰囲気の良さに感心してしまう。
 店の名前は“Sea Breeze”というらしい。自分達の店の名前とは違ってシャレた名前だ。


 菜月が腕時計を見る。時刻は1時半過ぎ。
 丁度、客が空き始める時間帯だった。店のから客が次々に出て行っている。イイ時間帯だと思う。


 隣で風花が「お腹減った」と言うものだから早速店内に入った。
 店内の雰囲気の良さも本当に良かった。

 少し狭いが、さすが噂になるほどの人気店だ。(それにこの店、パスタ専門の店のようだ)


 ただ時間帯が時間帯で、今は自分達だけしかいない。(すぐに自分達のあとからお客が来たが)


 海が見える見晴らしのイイ窓際の席を陣取り、菜月は「イイ店だね」と風花に言う。
 風花は頷いて、来て良かった!とメニューを手に取って広げ始める。
 

「どれにしようかな。全部美味そうなんだけど」
「好きなの選びなよ。今日は風花の誕生日なんだし、好きなだけ食べられるだけ選んで」
「おう!そうする!」
「食べ終わったら、ここら辺を歩いてみようか?」


 ウンウン頷いて、風花はメニューに目を配っている。


 あまり此方の話を聞いてないようだ。
 微苦笑し、あとで決めればいいかと菜月は頬杖をついた。

 メニューを真剣に選んでいる風花を見てふと思う。

 風花がこんなに喜ぶならもっとデートしてあげたいなぁ。
 自分は恋愛に関して意識が低いから、ホント鈍感なところがあると風花によく言われる。


 もう少し意識してみよう、折角こういう特別な仲なのだから。
 


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