5-14
「ふーちゃんの次は僕だ。どうぞ、受け取って下さい」
「雪之介さん、ありがと。これは、本かな?」
「はい!とっておきの本ですよ」
目を輝かせて雪之介が言うものだから、菜月は礼を言ってラッピングを取る。分厚い本が3冊入っている。
菜月は本のタイトルを見て、目を丸くした。
「こ、これ『宇宙物理学研究全集』だね!……すっごい。全3集、揃ってる」
「昨日は発売日だったんで、僕の分と合わせて買ってきました」
「ありがとう。早速今日から読ませてもらうよ」
「宇宙物理学……ほ、欲しくないんですが」
「諦めろ。本条。雪之介と菜月先輩の話、時々高度すぎて俺達にはついていけないんだからな」
ていうか、さすがガリ勉コンビ。
そんな本を貰って喜ぶのは極僅かだ。
菜月はテーブルに貰った本を置く。
それを見て手毬が「次は私!」と勢いよく菜月にプレゼントを渡した。
「受け取って!菜月先輩!」
「あ、あ、ありがとう。手毬さん」
「開けてみて!」
急かす手毬に、菜月は苦笑しながらプレゼントを開けることにする。
色々入っているようだ。中を開けた菜月は、中を覗き込んでひとつひとつ取り出してみる。
まず取り出したのは、便箋。
何故か柄がハートという菜月には不似合いな便箋だ。
「えっと、これは」
「この便箋はラブレターを書く専用」
「らっ、ラブレター……」
そんな俺、ラブレターなんて書いたら彼女に殺されます。
冷汗を掻いている菜月に、手毬は「風花先輩に書くんだよ」とウットリする。
「私なりのストーリーがあるの!まず、これを使って風花先輩に恋文を書く!それで、菜月先輩は、いつもの通学の帰り道でこっそりと家に帰る風花先輩に……あ!風花先輩から告白だっけ?だったら、これは風花先輩に渡してー」
「あのさ。どっからツッコめばイイ?手毬。あたしと菜月、学校通ってないし、何より同居してるんだけど」
「あああ!そーだった!」
「どんなストーリー自分の中で作ってるわけ?」
焦っている手毬は、ならばとばかりに菜月のプレゼントの中からDVDを取り出す。
『ラブリー青春』と書かれたタイトルを見て、菜月は思う。
これ、恋愛モノだ、と。
「恋愛モノを見て、2人が急接近!っていうなんて、画期的なアイテム!恋人になれること間違いなし」
「……俺と風花、すでに恋人なんだけど」
「ウッ、人様の恋愛は、くっ付くところが1番面白いのに。ねえ、1度2人とも別れてよ!」
「んな無茶苦茶なことデキるかー!あたしの2年間の片思いを無駄にするつもりか!」
「だってぇー!」
そこまでのストーリーがみたいのに!と手毬が嘆く。
もはや誕生日プレゼントではなく自分の願望だ。雪之介がしみじみそう思う。
手毬の嘆きを余所に、菜月はプレゼントの中を全て取り出した。
手毬がくれたのは、便箋やDVDの他にノート(たぶん交換日記でもしろとくれたのだろう)や実用的なシャープペンシルや消しゴムが入っていた。
まあ、素直に受け取っておくべきだろう。
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