みんなのプレゼント
―――風花達が店に戻った後の話。
「お誕生日おめでとうございます!菜月くん!」
「おめでとー!菜月先輩!」
「あ、あ、あ、ありがと……うわっ、は、恥ずかしいな。この歳で祝ってもらえるなんて」
「皆で祝ってもらうこと、初めてなのだろう?良いことではないか!」
「で、ですが……」
目の前のケーキを見ながら、菜月はしきりに頬を掻いていた。
かなり照れているようだ。少々頬が紅潮している。
バースデーケーキなんて久しく見ていない。
懐かしいとばかりに、ケーキを覗き込む。
蝋燭は立てていないものの、ケーキの上に乗っているホワイトチョコレートプレートには『Happy Birthday Natsuki』とチョコペンで名前が書かれている。
ご丁寧に、砂糖で作られている小さな菜月の砂糖菓子人形まである。
ニッコリと笑っている自分の砂糖菓子人形を見て、菜月はよく出来てるなと感心した。
ネイリー曰く、このバースデーケーキは、ネイリーの屋敷でメイドさんとして働いている大きな桃色のリボンがチャームポイント、恥ずかしがり屋のガイコツのスケルちゃん(♀)が作ってくれたらしい。
スケルちゃんに今度お礼をしなきゃ、菜月はしみじみ思う。
風花がケーキを目の前にして「ケーキを食べる前に!」と自分のお出かけ用バックの中からプレゼントを取り出した。
ラッピングしてあるプレゼントを菜月の目の前に出し「1番乗り」と笑みを浮かべる。
「オメデトさん」
「あ、あ、あ、あああありがと。わ、悪いな……なんか」
「主役が罪悪感を感じてどーするわけ?この小心者」
「だってさ、慣れてないというか」
「風花先輩のは最後に開けようぜ。彼女様のプレゼントは最後のお楽しみってことだな。で、どうぞ、これ」
「あ、ありがとう冬斗さん」
冬斗からプレゼントを受け取る。
早速、中を開けて、皆で見ようと言うものだから菜月はプレゼントを開け始めた。
冬斗の言うとおり、風花のプレゼントは最後に開けることにする。
風花も渡すのは1番乗りがイイが、開けてもらうのは最後がイイようだ。
何だろう?と菜月がプレゼントを開ければ、入っていたのはキャスケットとチェーンと眼鏡。
眼鏡は伊達眼鏡のようだ。冬斗がキャスケットを菜月に被せ「似合う似合う」と笑った。
「風花先輩がキャスケット被ってたから、菜月先輩もーって、思ってよ。あと、もー少しお洒落になった方がイイと思って、チェーンと伊達眼鏡。ぜってー眼鏡、似合うって」
「掛けてみれば?菜月。折角、冬斗がくれたんだもの」
「う、うん。似合うかな?」
眼鏡を掛けてみれば、「雪之介2号」と冬斗が笑いを噛み殺した。
雪之介がどういう意味、と冬斗に聞けば、冬斗が首を横に振ってなんでもないと口元を押さえる。
ガリ勉が此処にまたひとり、誕生したと笑っているのだ。
似合うには似合うし、お洒落はお洒落だが、やっぱりガリ勉に見える。
これだったらサングラスの方が良かっただろうか?
いや、菜月には絶対サングラスは似合わないだろう。伊達眼鏡を贈って正解だ。
風花が「今度のデートの時してよ」と笑った。
菜月はそうしよっかなと笑って冬斗にもう1度礼を言い、掛けていた伊達眼鏡とキャスケットを取り、テーブルに置く。
貰ったプレゼントを改めて見る為に、テーブルの上に置くことにした。
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