聖なる夜に響き渡る
「ジングルベール!ジングルベール!今日はダーリンのたんじょーび!」
「風花、ちょっ、そんな大きな声で歌わなくてもッ。恥ずかしいから」
「バッカ!あたしが祝ってるんだから、素直に受けとれっつーの!」
脹れ面を作る風花に菜月は苦笑いした。
人の目も気にせず大きな声で歌う風花の気持ち、とても嬉しい。
銀糸を靡かせて風花は歌う。
皆がいることなんて忘れるように、顔を綻ばせて。
「メリークリスマス♪アーンド〜ハッピーバースデー♪」
ヤサシイ悪魔の声が菜月の心に響いた。
クリスマスは嫌いだ。クリスマスイブも嫌いだ。
そして、自分の誕生日も密かに嫌だ。
だって、どれもイイコトなんてあまりなかった。
クリスマスイブにプレゼントを2つくれたじいさまを失ってから、より一層嫌いだった。
1番は、母親に家族に祝って貰えなかったという幼い頃の妬みや僻みが嫌いの原因に繋がっているんだと思う。
俺のことを、よくイイ人だって見られるけど、俺だって醜い感情を持っている。
寧ろ醜い感情の方が、持っている感情の割合を多く占めていると思う。
家族でクリスマスを過ごしている誰かを見て、今もムカつくことがある。
けど、好きになるキッカケは掴めるかもしれない。銀色の悪魔が、風花が、キッカケをくれたから。
でも来年、俺の隣に風花はいないかもしれない。
そうなっても風花が俺以外の誰かを選んだというのなら、いなくても仕方がないと思う。
けど思うんだ。
クリスマスは嫌いだけど、今以上に嫌うことはないって。
じいさまが亡くなった時のように、嫌うことはないと思う。
なんでだろう、そう思うんだ。
うん、きっと今以上には嫌わないよ―――。
End
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