5-9
街に灯りが灯る。するとクリスマスツリーを見上げていた客達も動き始めた。
「綺麗だったね」とか「凄かったね」とか、思い思いの感想が飛び交っている。
菜月と風花も、皆を探しに動き始める。
皆はすぐに見つかった。
あかりが「何処行ってたんですかー!」と脹れ面を作っている。
風花は意地悪な笑みを浮かべ、親指で菜月を指差す。
「ダーリンが2人で見たいっつったからー?2人で見てた」
「ちょっ、シィー!風花!それはシィー!」
「へえ、菜月先輩、やっぱ2人っきりで過ごしたいと思ってたんだな」
「そー……それはっ……あははは、クリスマスイブだしね」
誤魔化し笑いをする菜月に、ジェラールがフフッと笑みを浮かべる。
「恋人同士で過ごしたいわよねん」優しく言ってくるものだから言葉に詰まった。
聞いていたあかりは、羨ましいと握り拳を作っている。
手毬が目を輝かせて「どんな会話を交わしたの!」とすっ飛んできた。
風花は内緒と上機嫌に舌を出す。
「あたしと菜月だけのひーみーつ」
「えーそんなー!」
「ま、今日は菜月にとって特別な日だしな。フロイラインと2人っきりになりたかったんだろう」
「そうですね……あー!私だって来年はッ!!取り敢えず、店に戻りましょうか。これからパーティーです」
「皆、プレゼント、用意したか?」
「ええ?!」
笑っていた菜月が冬斗の言葉に焦る。
そんな話、一言も聞いていない。
そりゃ確かに、クリスマスパーティーといったらプレゼント交換が付き物だが。菜月以外、皆用意しているようだ。
風花でさえ、用意していると自分のバックを叩く。
風花さん、そんな、知っているなら俺に教えてくれても……菜月は、焦って店を見渡す。
「お、俺!今から買ってきます!」
「あ、いいのよん?菜月は。ワザと教えてなかったんだもの」
「……な、なんで」
「なんでって、これから、菜月先輩の誕生日会だからですよ?主役からプレゼントを貰うわけには行きませんよ」
雪之介が笑みを浮かべて菜月に教える。
目が点になった菜月は、周りを見渡す。
誰の誕生日会だって?菜月?菜月と雪之介さんは言った?菜月は俺だよね……俺の?!
「だぁ、だって、クリスマスパーティーじゃ」
「クリスマスパーティーはサブ。メインは、菜月先輩の誕生日会だよ!」
「本条から聞いた。なんで、黙ってるんだよ。教えてくれれば良かったのによ。もー少しで、スルーするところだった」
「あたしは2回もスルーした!」
お祝いしたかったのに、と文句を垂れる風花。
まだ状況が呑み込めず、菜月は、グルグルと思考を廻らせている。
誰が、誰の、パーティー?
だって…これはクリスマスパーティーじゃ。
自分の誕生日会って……やっと状況が掴めた菜月は、やっぱりオロオロするばかりだった。
そんな大それたモノでもない、サブを自分の誕生日会にして欲しい。
誕生日会なんて、こんな大人数としたことがないし、自分がお祝いされるパーティーなんて申し訳も立たない。
挙動不審になっている菜月の頭を叩いて、風花が腰に手を当てる。
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