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5-8
 

 自分の彼氏はクリスマス嫌いだ。
 人間界では変わり者だと思われるだろう。

 自分が住んでいた魔界ではクリスマスという行事はなかったが、本を読んで人間界で行われる“クリスマス”は皆、大好きだと知識として覚えたことがある。

 だから、てっきり、菜月も好きだと思った。



 けど、菜月は、クリスマスが嫌いだった。



 それは……暗い過去があるせいだった。
 


 視界が真っ暗になる。
 途端に歓声が上がった。イルミネーションの灯りだけになり、艶やかに輝いていたホワイトクリスマスツリーが一層輝き光っている。
 色とりどりの電灯が点滅し、観に来てくれている観客の目を楽しませる。


 
「風花」
 
  
  
 名前を呼ばれ、風花はツリーからは目を放さず「何?」と返事をする。
 予想していたのか、菜月もまたツリーから目を放さなかった。
 
 
「知ってると思うけど、俺はね。小さい頃から、クリスマスとか、クリスマスイブとか、嫌いなんだ。今は昔よりも嫌いでね……じいさまが亡くなって、一緒に過ごす人が居なくなって、年月が経って、色々と妬みとか僻みが入ってきたのかもしれない。クリスマスイブに生まれた自分が、1番憎く感じた」

「へえ、あんたが?あんた、イイ人そーだから。そう見えないけど?」

「あははは、俺だって感情のある生き物だよ。そういう醜い感情を持ってるし、イイ人でもないよ。それに、やっぱりクリスマスって今も嫌いだ」
 
 
 クリスマスが嫌いだと菜月が言う言葉に、棘はない。
 どっちらかというと失笑が交じっている。

「嫌いだからクリスマスツリーのイルミネーションに、あまり感動がないんだ」
「そっか……仕方ない、それは」
「さっきまでは、ね」
「……さっきまでは?」


 では今は?

 風花の浮かんだ疑問に菜月は答える。


「今は、感動じゃないけど、似たような感情が出てきてる。それはね、きっと、風花と見てるからだと思うんだ」
「あたしと?」
 
 それ以上、菜月は何も言わなかった。


 ふーんと相槌を打ちつつ、風花は笑みを浮かべっぱなしだった。


 言わなくても伝わっている。
 少し痛いほど握りしめてくる少年の手を受け止め、風花は街中で流れていた名前も知らないクリスマスソングを鼻歌で歌う。

 
 あれほど嫌っていたクリスマスソングが、今の菜月は普通に耳に入り、受け止められる。
 そのことが菜月には、どうしようもなく不思議な気持ちでいっぱいだった。
 


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