俺、きっとクリスマスは好きにはなれないけど。 風花達の訪れている街の中心部には大きなクリスマスツリーが飾られている。 そのイルミネーションは毎年まいとし、幻想的で綺麗だといわれていた。 小さなクリスマスツリーが周りを囲い大きなクリスマスツリーをより一層綺麗に見せようと、様々な手が施されている。 1ヵ月も前から準備をしているだけあり、かなりの人気を誇る。 1番の注目ポイントはツリーが真っ白だということだろう。 ホワイトクリスマスツリーは、ここら辺ではあまり見られることがない。 ある一定の時間帯が来ると店の照明が落とされ、イルミネーションの光だけが街を包み込む。 ホワイトクリスマスツリーは、イルミネーションの中で最も綺麗なのだ。 イルミネーションを見に来た風花達も、当然、1番の目的はホワイトクリスマスツリーのイルミネーションだ。 風花達が街の中心部にある大きなホワイトクリスマスツリーに辿り着くと、綺麗に飾り付けされたホワイトクリスマスツリーが迎えてくれた。 夜だからこそ、電灯が光るだけで幻想的に瞳に映る。 もう少ししたら、街の電灯が5分ほど落とされるだろう。 これ以上に綺麗な光景がお目に掛かれる。 今でも、綺麗だとあかりと手毬がウットリし、ホワイトクリスマスツリーを見上げていた。 冬斗は「悪くはないな」と、親友の雪之介とツリーを見上げている。 ネイリーはツリーに見蕩れつつも、やっぱりジェラールの熱い視線から逃げていた。その場から逃げないことが救いだと思う。 菜月は、クリスマスツリーを見上げて、目を細めていた。 綺麗といえば、綺麗。飾りは豪勢で、赤や青や黄の電灯がツリーに散りばめられていて……だけど、それだけだ。 感動が、どうしても込み上げてこない。 自分は捻くれ者なのだろう。 何処からか流れてくるクリスマスソングに溜息をついた。 素直に喜べない自分が、ムカつく。 皆、それぞれに楽しんでいるというのに。 息を吐けば、真っ白な息の塊が吐き出される。 その息が空気に溶けていくところを見つめつつ、クリスマスツリーに視線を送る。 ツリーの飾り付けとして可愛らしい天使の人形が目に付く。クリスマスになれば、必ずお目にする天使。憎たらしいものだ。 「スッゲー。イルミネーションってさ」 「そうだね……凄いね」 隣に並んでいる風花がホワイトクリスマスツリーを見上げながら小さく感動している。 微苦笑して、相槌を打てば風花は、ツリーから目を放し菜月の顔を覗き込む。 「しっかしクリスマスっつーのはさ。色んなところで天使が出てくるよな。人気者だよねぇ、天使。ちょっと、ムカツクかもー。悪魔だって出しても良くない?」 「仕方ないよ。人間界のクリスマスは昔からこうだから」 「フーン。でも、ま、あたしは楽しいからイイけどね」 「楽しい?クリスマス」 「正確には、クリスマスイブが楽しいよ」 「あープレゼント貰えるのはクリスマスイブの夜だからね。クリスマスが盛り上がるのもイブだし」 すると風花は、ハァ?と声を上げた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |