5-4
―――冬の時期の日暮れは早く、もう空が暗い。
しかし日が暮れたというのに人は多い。
日曜日の真昼の商店街を歩いているのではないか?というほど、人が込んでいる。
イルミネーションを一目見ようと、皆、遊びに来ているのだ。
イルミネーションを見に来ているのは、主に若者。特に若いカップルばっかり目に留まる。
クソ寒い冬の時期に、イチャイチャして自分達まで色んな意味ホットにさせてくれるカップルがあちらこちら目に留まって仕方がない。
若いカップルを見ると対抗意識を燃やすのは風花だ。
先頭を歩いていた風花は足を止め、後ろを振り返ると最後尾を歩いていた菜月に目を輝かせる。
ぼんやりと最後尾を歩いていた菜月は、風花の視線にギョッとして嫌な予感がするとばかりに足を止めて一歩後退りをする。
何を考えているのか、なんとなーく分かってしまうモノだから、付き合いの時間の大切さを教えてくれる。
キラキラと目を輝かせて……いや、ギラギラという表現の方がイイかもしれない。
ギラギラと目を光らせて、風花がカップル達を指差す。
「菜月、アレは何?!」
「か……カップルだね」
「あたしと菜月は?!仕事パートナーなんて言ったらぶっ飛ばす!」
「半強制的に、『俺達、恋人です』って言わせようとしてるでしょ?はい、俺と風花は恋人同士ですね」
「よーし!そこまで分かってるなら、話は早い!あたし達もイチャイチャ!目指せ、バカップル!」
「うん……やめよう。皆がいるから、ね?」
「だあああ!なんでー!あたしと菜月は、こーいーびーとー!」
「ふ、風花。此処で駄々捏ねないでっ」
周りを見渡せば、一般人の皆様がこちらに注目している。
明らかに風花に同情、菜月に酷薄だという視線が向けられている。
「うっわー、ツレナイ」とか「クリスマスイブなのにね。彼氏酷くない?」と風花に同情する声が聞こえ、菜月は肩を落とす。
どうして、此処で、自分がそんな眼差しを向けられるのか。
ホント今日はツイていない。
ネイリーが「君の代わりに、僕がフロイラインとイチャイチャしようか?」と至って真面目にいうものだから菜月はブンブンと首を横に振った。
それは嫌だ。風花はあんな性格(失礼)でも自分の恋人なのだ。
ネイリーとて、それは譲れない。
唇を尖らせて手遊びをしながらも、「俺が……」と口ごもっている。
様子を見ていた風花が、目をギラギラさせてヤッタ!とばかりに握り拳を作る。
(よーし、よし!あの鈍ちゃんを、その気にさせた!男落としその3、“皆の前で駄々を捏ねる”は完璧に成功だ!)
小声で自分の胸の内を言っている風花。
こっそりとその小声を聞いていたのは高校生仲良し4人組。
顔を見合わせて、空笑いを浮かべる。
……やはり風花は正真正銘の悪魔だったようだ。
こうなることを想定して行動を起こしていたなんて、とんだ悪女。
心底菜月に同情してしまう。
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