*相々傘(高校生四人組)
雨の日の、ちょっとした光景を目にした高校生四人組の話。あかり視点。
* *
雨の日は憂鬱。
午後から急に土砂降りの雨が降り出し、私は気が滅入ってしまう。
傘を差しても制服は濡れまくる。びちゃびちゃになって気持ち悪い。
傘なんて頭だけしか、雨を防げないではないか。
どうして科学が進み携帯電話などの電気製品は発達するのに、傘は昔も今もこの形、このスタイルなのだろう。
防水機能が〜とか携帯式で〜とか、色々書いてあるけど、基本的スタイルは変わらないよなぁ。
科学が発達してるんだし、誰か傘を越える雨具を発明してくれないだろうか。
私と一緒に帰っている手毬も「やだぁ」と愚痴を零していた。東西も制服のズボンを気にしながら歩いている。
気持ち悪いことこの上ないようだ。
ユッキも「雪ならなぁ…」とぼやいている。雪童子らしい言葉に苦笑いしてしまった。
私達はそれぞれ雨に文句を言いながら、家路を歩く。
「あれ? あれ、風花先輩じゃない?」
ユッキの言葉に私達はコンビニの方を見た。
コンビニ前で雨宿りしているのは確かに風花さんだ。片手にビニール袋を下げている。コンビニで買い物をしていたようだ。
傘を持っていないらしい。風花さんの髪が少し濡れていた。きっと行く途中で降り出し、濡れてしまったのだろう。傘ぐらい、コンビニでビニール傘を買って帰ればイイのに。
まさか……お金がない? 悪女のくせに?(関係ないけど)
手毬が「入れてあげよう」とコンビニの方を指差した。
同意して、東西が私達にコンビニに行こうぜと呼び掛けた。
「あ、待って」
ユッキが止めてくる。
どうしたのかと聞けば、ユッキが「菜月先輩だ」と前を指差した。あ、ホントだ。菜月くんが傘差して風花さんに近付いて来ている。二人に気付かれないように、近付いて様子を見に行く。
菜月くんは風花さんに呆れていた。
「もお、だから傘持って行けって言ったのに。ワザと持って行かないんだから」
「イイじゃ〜ん」
「良くないよ。ホラ、身体濡れてる。風邪ひいたらどうするの」
タオルを風花さんの頭に被せながら菜月くんがお小言を漏らしている。
風花さんは笑った。
「菜月が迎えに来てくれるから、全然ヘーキだし」
「それとこれとは話が別だよ。帰ろっか」
「ン。傘入れて」
「言うと思った。だから傘一本しか持ってきてないんだよ。前に俺が持って来たら、一本でイイなんて言ってさ」
「だって勿体ないだろ〜? 折角のお迎えなのに。相々傘だよ、相々傘」
子供っぽく笑う風花さんは、菜月くんの傘に入れてもらっていた。
風花さんの方が背が高いのに菜月くんが頑張って傘を持っている。男としてのプライドかな? 仲良く帰って行く二人を見送った私達は声を掛けることがデキなかった。
だって、風花さんの表情見てたら……なんか邪魔しちゃ悪い気がしたんだもん。(手毬は突撃しようって言ってたけど)
「あーあ。先輩達、見せ付けてくれたよな」
「仲良いね。お迎えだって」
「突撃したかったなー」
「邪魔しちゃワルィだろ? なーんか、スッゲー風花先輩幸せそうだったし」
「うん、確かに」
ふと私は思った。
今、風花さんと菜月くんが仲良く一つの傘で帰ったように、昔の人も、ああやってお迎えをしては一緒に帰ったのかな。
もしそうだとしたら、
もう暫くは傘を越える雨具なんて発明されないような、そんな気がする。
あーあ。
お迎えなんて羨ましいな、風花さん。
End
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!