*人間とか、妖怪とか、(雪之介)
雪之介が友に妖怪だと打ち明けたその後の学校生活。
* *
今の時間は体育。
種目、ハードル走。
天候は最悪。皆にとっては、涼しく過ごしやすい日だと思っていても、僕にとっては炎天下の中で体育をする環境。本当に気が滅入ってしまう。時間がデキれば直ぐに日陰で休んで、身体を冷やしていた。
ふーちゃんや本条さん、乙川さんは気持ち良さそうに走っている。
凄いなぁ、暑くないのかな。
こんな時、やっぱり人間の方が良いなって思っちゃうんだよな。
僕、暑さにはダメダメだから。
あ……ふーちゃんがこっち来た。
暑いって愚痴ってるふーちゃんが隣に座る。
「走ったらアチィな。雪之介、どーにかしろって」
「えー? 僕も暑いよ」
「アチィんだって」
「僕も暑い。だから何もしません」
「ちぇっ、ケチな奴。あーあ。お前が羨ましいぜ」
「……え?」
「身体冷やせるンだぜ。人間の俺には、そんな能力アリマセーン。自然に火照りを冷ますだけ。人間、チョー不便」
羨ましい、って言うふーちゃん。
人間は不便だぜ、って言ってくるから笑っちゃう。
「僕には人間のふーちゃんが羨ましいよ。暑さに弱くないし、溶けないジャン」
「人間って妖力もないんだぜ? ハンドパワーなんっつーもので、何かできるわけでもないしよ」
「僕は人間が羨ましいって」
「俺は妖怪が羨ましいぜ」
ふーちゃんと一緒に吹き出す。
ま、お互い様かな。言い分、どっちもどっちだし。
根本的には変わらないんだしね。僕とふーちゃん達って。
「お、本条たちがこっち来るな。日陰には入れねぇぜ。狭くなる」
「あははは、ふーちゃん、入れてあげようよ」
「イーヤ」
フンと鼻を鳴らすふーちゃん。
本条さんと乙川さんがこっちに走ってくる。
いつもの光景だ。
なんでもない日常だけど、なんか前よりも良いって思っちゃうんだよね。
きっと、ふーちゃん達が妖怪だって知ってくれているからだろうなぁ。
人間になりたいって気持ち、確実に前より薄れてる。
End
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!