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“同一現象”
 
 
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 十人十色だというが、衝撃が走ったり唐突に何かを突きつけられると、大抵、人の反応って同じようなモノを取る。
 例えば、無言で銃を突きつけられると人は無意識に手を上げてしまう。
 テレビでよく「手を上げろ」というシーンがあるから、無意識に手を上げてしまうのだろうけど。
 誰も手を上げろとも言っていないのに銃を突きつけられたら、やっぱり悲鳴を上げながらとか混乱しながらも、大体の人は手を上げるだろう。
 

 つまり言いたいことは、突然何かが起きると人は同じような行動を取ってしまうと言いたいわけだ。


 その現象を勝手に名をつけていいなら、“同一現象”とでも名をつけたい。
 唐突に何か突きつけられると同じ行動をしてしまう、と意味をつけて辞典にでも載せてやりたい。



 菜月はしみじみと思っていた。



 何故こんなことを思っているのかというと“同一現象”が、今この店にも起きているからだ。
 同じような反応はされると思ったが、まさか此処までとは……菜月は溜息をつく。


 横目で出入り口である扉に視線を向ければ、物の見事に固まっている女子高生と吸血鬼とセントエルフが突っ立っていた。


 石化してしまっている3人の視線の先には、3人の子供。
 子供だけなら驚かないだろう。

 ただ、子供達がお客が来たと自分達に教えてくれる時に放った言葉で、見事に固まってしまったのだ。

 3人が3人とも固まってしまうという事態に、風花は爆笑していた。
 カウンターの台を叩いて涙を浮かべている……ちょっと笑いすぎだ。


 子供達はキョトントした顔で首を傾げる。


 どうしたの?とセントエルフであるジェラールのスカートの裾を掴んで、軽く引っ張り声を掛ければジェラールが我に返った。
 声を掛けてくれる子供達に、挨拶をしながらも視線は菜月と風花に向けられている。
 爆笑している風花と、空笑いをする菜月を見て「子守のお仕事?」と聞いてきた。
 
「この子達、どうしたのん?菜月、風花」
「どうしたって言われたら……まあ、色々と」
「かーたま!とーたま!このひとたち、おともだち?」

 コン次郎が聞いてきた。
 風花が「そうだよ」と言えば、コン次郎が「そうなんだー」と興味津々にジェラール達を見ていた。

 再び衝撃が走り、我に返ったあかりは子供3人を指差して、風花と菜月の顔を交互に見る。

 口をパクパクさせて困惑した表情を浮かべている女子高生さんは、やっとのことで悲鳴に近い声を上げることに成功した。
 


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