4-12
「どこに、いたの?ぼく……いっぱいさがした」
「ごめんごめん。お外にいたんだよ。あれ?他の皆は?」
「ぼくだけ、あがったのー。とーたまひとりだし」
独りじゃ淋しいし、とはにかむコン三郎。
両耳がピクンと動き、尻尾が左右に揺れている。
どうやら、自分を心配して上がってきてくれたようだ。
微苦笑してコン三郎の髪をタオルで拭いてやる。
水気をしっかり取っておかないと風邪をひいてしまう。
頭を拭いてやっていると、コン三郎がモジモジしながら何かに躊躇している。
どうしたのかと、目を合わせればコン三郎が「あんね」と口を尖らせる。
「とーたま、おこるかもぉー……しれないけど」
「ダイジョーブ。怒らないよ。言ってみて」
「ほんと?」
「ほんとだよ」
「じゃあ、じゃあ……ぼく、かたぐるま、してほしい」
肩車。
というと、あの肩車ですか?
タラッと汗を流して、菜月は表情を固まらせた。
出来るかな?抱っこは出来るけど、肩車はー……したことないよ。
いや、大丈夫。風花をおんぶしたことだってある。
相手は体重の軽い子供。出来る筈。
大丈夫、やれば俺だって出来る子だよ。
不安そうな表情を浮かべるコン三郎に「イイよ」と言えば、嬉しそうに手を伸ばしてくる。
菜月は大丈夫と何度も唱えながら、コン三郎の体を抱き上げた。
どうにか、コン三郎を肩車すれば、はしゃぐ声が頭上から聞こえる。
良かった、ちゃんとデキて。
安堵の息を漏らしているとコン三郎が「すごいー!」と言ってきた。
「コン三郎。どう」
「すごい!たかーい!ずっとここにいたいなぁ!」
「そ、それは困るなー……コン三郎くん」
「だってすごいんだもん。ぼく、はじめて。かたぐるまされたの」
「で、でもなぁ」
「あーズリィ!コン三郎!じぶんだけー!」
「おいらも、おいらもー!」
「菜月とーたま。家族サービスしてるじゃん?」
風呂から上がってきた風花が、意地悪く笑いながらからかってきた。
こっちは頑張っているというのに、意地悪く笑わなくても……苦笑すれば、足元にコン太郎とコン次郎がしがみ付いてきた。
目を輝かせて自分にしてと強請ってくる。
どっちが先にしてもらうか、コン太郎とコン次郎の兄弟喧嘩が始まったのはこの後のこと。
風花が「してやってもいいけど?」と言うが、現在お父さん役である菜月にしてもらいたいようだ。
コン三郎は「まだここにいたい!」と頭にしがみ付く始末。
板ばさみになった菜月は、風花に助けを求める。
風花は大きく右手を上げた。
「あたしもしてもらいたい!」
「そ……そんな無茶苦茶な!」
「大丈夫。あたしは最後でいいから」
「何が大丈夫なの?!」
助ける相手を誤ったようだ。
目を輝かせる風花と、子供達の騒ぎ声を聞きながら、この状況をどうしようかと菜月は肩を落とした。
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