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4-11
 
 
 食後、子供達は風花と一緒にお風呂に入りたいというモノだから、風花は子供達と風呂へ。
 菜月はというと中庭にいた。

 基本的に子供は母親に懐くものだ。
 男の子だったら尚更、母親に懐くものだろう。

 風花をスッカリ母親と認識している子供達は、しきりに甘えている。
 鬱陶しいとか、ぼやきながらも風花はしっかり子供の世話をしているのだから可笑しい。
 よく考えてみれば、風花はいつも甘えたがる立場だ。


 でも、基本、風花は面倒見が良いから甘えられたいと密かに思っていることを菜月は知っている。

 だから、甘えられて嬉しい気持ちもあるのだろう。

 
「かーたま!かーたま!コン次郎がおいらにみずかけてくる!」
「そういうコン太郎だってかけてくるんだぜ?!っ、かけたなー!」
「なんだよーコン次郎がわるい!」
「コン太郎がわるいんだろー!」

「風呂の中狭いんだから、暴れるんじゃないよ!喧嘩しない!」


「うー……かーたま。つめたい、さむい」
「って、コン三郎は水で髪洗ってたわけ?!風邪ひくし!」
「だって、これ、つかいかた、わからないー……」

「シャワーの使い方のこと?なんだよ言えばッ、とにかく中に入れ?な?な?」


「ウェーン!かーたま!」
「コン次郎がー!」

「だから喧嘩すんじゃないよ!コン太郎!コン次郎!」
 

 浴場から騒がしい声が聞こえてくる。風花は苦労しているようだ。
 仲裁に入るなんて慣れてないだろう。

 植物達の面倒をみながら、菜月は笑みを浮かべていた。

 しかし、すぐに表情を戻し、子供達のことについて考える。
 あの子達は何処からやって来て、何処で自分達を知って、どうして自分達を親だと思ったのだろう。


 1番気掛かりなのは、あの子達の親はどうしたのだろう。

 
 もしかして、あの子達は、捨てられたのだろうか……いや、断定するのは良くない。

 でも、もし、あの子供達に行き場所も生き場所もなかったら……その時は、あの子達は。

 
 芝生の上に腰を下ろし夜風に当たりながら、菜月は暫く考える。
 とにかく調べてみる必要がある。
 子供達の生い立ち、子供達の故郷、子供達自身の両親。

 いや、もしかしたら両親は調べてはいけない領域あるのかもしれない。
 子供達が家出をしたとか、そんな理由なら、調べてもいいと思う。
 
 
 しかし、あの時の子供達の表情を考えると、子供達自身の為に調べない方が……何より家族のことを調べられる恐さ、十二分に分かる。
 
 
 吐息をついて中庭で黄昏ているとパタパタと足音が聞こえた。


 「とーたま?どこー?」と声が聞こえる。コン三郎の声だ。
 どうやら自分を探しているようだ。何度も何度も呼ぶ声が聞こえる。
 舌足らずの呼び声は、とても可愛らしい。

 腰を上げて、尻についた砂埃を払い落としながら部屋の中に入れば、コン三郎が「みつけたー」と指差してきた。
 コン三郎はタオルを頭から被っていた。



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あきゅろす。
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