4-10 「美味しいか?あんた等」 「おーいし!」 「よし、どんどん食えよ。サラダも沢山食べて、大きくならなきゃな。あ、だからって食いすぎは禁物さ。八段腹だよ」 「はーい、わかった!」 「八段ッ、そんな、恐ろしいよ……それ言うなら腹八分だって」 どんなお腹?八段腹って。 想像して、菜月はゾッとする。 そんな菜月を余所に、風花が、コン太郎の顔を見て「あーあー」と声を漏らした。 口の周りがカレーで黄色く汚れている。ティッシュを取って風花がコン太郎にこっちを向くよう言う。 コン太郎がこっちを向いた瞬間、ティッシュで口の周りを拭いてやる。 うーと唸っているコン太郎に「行儀よく食べような」と風花が言い聞かせている。 風花が言えることではないのだが……でも、なんか、微笑ましくて、菜月は笑みを浮かべた。 風花、母親っぽい。コン太郎の口の周りを拭いてやるところとか、言い聞かせるところとか。 女性って子供の前では、母性本能ってヤツが擽られるんだろうな。 綺麗にコン太郎の口を拭いた風花が、菜月の様子に気付く。 「な〜に、笑ってるわけ?」 「風花。俺のお母さんにもなってもらおうかな。イイお母さんしてるしさ」 「……ハァ?菜月、どういう」 「やっぱりこのカレー美味しく出来てる。あ、おかわりいる人は言ってね」 「ぼ、ぼくーおかわり」 「おいらも!」 「おれもおれも、おっれもー!」 皿を差し出す子供達は、もう平らげてしまったようだ。 余程お腹が減っていたらしい。 差し出す皿を受け取って、菜月が台所に向かう。風花は、「ちょっとー」と菜月に訊ねる。 「ねえ、どういう意味?菜月ィー」 「ンー?さあ、どういう意味でしょ?」 「ちょっと、菜月ー!」 風花の声に菜月が吹き出す。 肩を震わせて笑っているものだから、風花はさらにハァ?と首を傾げるしかなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |