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今晩は何にしようか?
 
 
 特売になっている豚肉のパックを手に取った菜月は値段シールを見て顔を顰めた。
 特売になっている豚肉だが、今夜の食卓には並べて上げられそうにない。
 何故なら、特売でも今のお財布の中身を見ると少々お高めだからだ。

 もう少し安い食材を選ぼうと菜月は豚肉のパックを元の位置に戻す。
 買い物カゴに目を落とせば、すでに余計な菓子類や日用品が入っている。


 今日は手持ちが少ないというのに、果たして足りるだろうか?


 しかも、自分の同居人であり仕事パートナーであり恋人である風花が目を輝かせながら日用品を物欲しそうに見ている。
 見ている日用品は、化粧品。
 ただ眺めているだけだが、新発売の口紅に釘付けだ。


 菜月は直感した。あの表情、絶対、強請るつもりだ!と。


 3年の付き合い経験は伊達じゃない。
 風花の表情を一目見て、分かってしまう。

 今日はあまり手持ちがないと言っているのに……でも、風花だって女の子だ。欲しいだろうな、化粧品。
 そういえば、ファンデーションとかマスカラが切れてるって言ってたな。

 男の菜月には、化粧品の欲しさがイマイチ分からないが、女の子は結構身なりを気にすることは知っていた。
 頭を掻いて物欲しそうに化粧品を眺めている風花に声を掛ける。


「風花、好きなの入れていいよ」

「マジ?!あたし、欲しかったんだよー!」


 目をキラキラ輝かせて風花が嬉しそうな顔を作る。

 
「その代わり、風花が選んだこの日用品は元に戻すからね?お金、あんまり持ってきてないし」
「分かった!ちょっと待って、今から選ぶから」
「えー?!選んでなかったの?!」
「すぐ決めるから。ちょっと待って」

 てっきりもう決めていると思っていたのに。
 真剣な顔をして、化粧品を見比べている風花。

 腕を組んで眉を顰めている。すぐに決めるなんて風花は言ったが……これは、時間が掛かりそうだ。
 ホント手の掛かる彼女で悪魔様だ。

 これで、自分は今夜のおかずを買いに行っていい?なんて言ったら怒るだろう。
 とっても口の悪い勝気な性格でも、独りにはなりたくないことは知っている。


 可愛く一言で言えば、まあ、淋しがり屋さんだ。


 彼女が気が済むまで、此処に居てやる。
 それが最善の方法だと菜月は思った。



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あきゅろす。
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