3-6
「ほ、ほら。人工呼吸で助かったんだし?人工呼吸は、ファーストには入らないよ。なあ、あかり」
「そそそそ、そうですよ……今の菜月くんがあるのも、おじいさまのおかげだと」
「ファーストキスは、そう、意識し合ってだね」
「意識の無かった菜月くんとの、人工呼吸は、キスに入りませんよ」
テンションを上げて、励ます2人。
菜月はまだ表情が暗い。黙り込む菜月が、ボソリ。
「男同士で……キショくない?」
それ、痛烈な一言です。
2人は顔を強張らせながらも、励ましを続ける。
「うっ、そ、それは…ば、馬鹿だな!命の重みを考えろって!」
「生きてること万歳ですよ!それに、それがファーストでも、セカンドが」
「セカンド……あははははっ、それも実は」
「実は?」
「ごめん!風花!」
手を合わせ逃げ出した菜月にポカンと風花はしていたが、まさか!と菜月を追った。
気絶しているネイリーを踏んづけて、逃げた菜月に怒鳴る。
「あんた!他の女としたことあるんだろ!」
「ごめんー!不可抗力だったんだって!隙を突かれてさ!」
「誰としたんだ!あたしの知ってる奴?!」
「知って…ると思う」
「こンの浮気モノー!」
「風花だって俺が初めての恋人じゃないじゃんかー!」
「あたしはイイんだよー!誰なワケ?!」
「自分だけずるいー!言わないよー!」
ドタンバタン、ぎゃあぎゃあ、と1階が煩くなった。
あかりはプロフィールを眺めて、ひとつ学んだと胸に手を置いた。
「知らなくてイイコト、恋人同士でもあるってことですね」
うんうん、頷くあかり。第3者がこの場に居れば、あかりに必ずこう言うだろう。
早く、2人の追いかけっこを止めてやれ、と。
早く、床に伏っしているネイリーに声を掛けてやれ、と。
結局の真相。
とある屋根の上で、自分の手鏡を覗いてるいばらは、笑みを浮かべた。
手鏡に映っているのは、“何でも屋”の様子。
「あーあ、風花ちゃん。焼きもち焼きしてる。可笑しい」
「いばら姐。原因は、いばら姐って分かってます?」
「イイんじゃない?あいつ、毎日、菜月と過ごしてるんだし?ずるいじゃん?初々しかったなー菜月」
鼻歌を歌っている主人に、デモンは溜息を付いた。
風花にしろ、いばらにしろ、我が儘な性格には変わりない。
「菜月の旦那。つくづく、女運ないような気がするのは、オイラだけですかね?」
End
2007.09.30
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