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取り調べ開始
 
 
  
「アイタタタ……拳骨なんて酷いよ。俺、ただの被害者なのに……」
 
 
 頭を擦って文句を垂れる菜月に、あかりは心底同情する。
 
「大丈夫ですか?菜月くん……ネイリーさんは」
「俺より酷い目に遭ったみたい。後ろで」

 頭を押さえている菜月が自分の後ろを見る。
 大きなたんこぶを頭にくっ付け、頬には青痣でき、床に伏っしている。

 声を掛けるべきか悩むところだが、今は目の前の彼女様のご機嫌取りが優先だ。
 不機嫌面を作っている風花は、頬杖を付いて「質問していい?」と訊ねてくる。

 訊ねてくるというより、脅しに近い。
 菜月はぎこちなく頷いた。


 今、応接室にいる。

 カーテンを締め切り、部屋を暗くして、小さな蛍光ランプを若葉色のクロスを敷いているテーブルに置いていた。
 眩しいばかりの蛍光ランプは、自分に向けられている。


 ……これじゃ取調べをされているようだ。


 何も悪いことしてないのに、どうしてこんな目に。
 冷汗を流しながら、目の前に座っている風花とあかりを見る。
 あかりは風花のご機嫌を取りつつ、プロフィールの紙を取り出した。風花は、足を組んで菜月をジッと睨む。

「まず名前、性別、歳を白状しな」
「えーっと…鬼夜菜月。男で…20歳です」
「そんな凄みを利かせて聞かなくても……じゃ、じゃあ、身長と体重を」
「162cmで…42sです」
「小さいですね。もう、成人なのにっ、うわわ!いや、落ち込まないで下さい菜月くん!」


 ドーンと暗くなっている菜月は、空笑いしている。


 メチャクチャ身長のことは、気にしているようだ。
 そりゃ彼女が170cmなのだから、気にするだろうけど。
 「色んな人がいますよ」あかりが拳を作って励ますが逆効果。菜月はさらに落ち込んでしまった。風花はあかりに拳骨を入れ、取り敢えず黙らせる。
 質問続けるよ、と風花は咳払いをした。

「誕生日と血液型を言いな」
「12月24日。A型だよ」
「クリスマスイブですか?素敵ですね!」
「ウーン、あんまり嬉しくないなー……クリスマス自体好きじゃないから」

 クリスマスが好きじゃないなんて驚きだ。
 どうしてか訊ねれば、菜月は苦笑いした。

「天使とか教会が出てくるからかなー。なんか、昔から好きになれないんだ」
「そっか。菜月は教会苦手だしね」
「あははは、1番は天使嫌いだからかな?クリスマスってよく天使出てくるしさ」


 家族が家族だ。

 菜月自身、嬉しくはないだろう。


 それでも、あかりは「素敵な日なのに」と残念に思った。
 クリスマスといえば、恋人達の中でも一大イベント。恋人のいない自分は、家族と過ごすしかない。

 この淋しさを味わうこともなく、優雅に過ごせるというのに!
 天使も教会も関係ない。

 これは、恋人のメインイベントなのだ!

 菜月に、「クリスマスは恋人のお祭りなんですよ!」と訴えかけた。
 「今年は凄い誕生日とクリスマスイブを過ごして下さい!」とあかりが熱く訴えれば、菜月は頷くしか出来なかった。



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あきゅろす。
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