2-7
「何…あたし、機嫌悪いんだけど」
「目に見える証って、やっぱりあると安心するよね」
「はぁ?」
意味が分からんと風花が苛立ちを募らせる。
菜月は風花を見上げて、ニッコリと笑った。
「ごめんね。勝手に貰って。けど、風花のピアスを貰わないと意味なかったんだ」
拭いた食器を仕舞う為に菜月が食器棚に移動する。
怪訝な顔をしていた風花は移動する菜月を見てふと目を瞠った。
菜月の右耳に自分のピアスがしてある。
そんな馬鹿な。
だって菜月、耳に穴なんてあけてなかったじゃんか。
吸い寄せられるように階段を下りて、風花は菜月を凝視した。
背中を向けて食器棚に食器を仕舞う菜月は、気配で風花が下りて来たことに気付く。
風花が聞いただけでもなく勝手に菜月は話し始める。
「風花とお揃いだねー、片方貰ったから当たり前だけどさ」
「穴…あんた、あけたの?」
「頑張ったよ。ピアッサー…恐くて恐くて!なんでみんな、自分であけようと思うのか分かんないけど、風花とお揃いになったからいいか!って思ってるよ。恋人同士なんだから、こういうのもイイんじゃないかな?って」
とか……此処まで言っておいて、なんだけれど、今凄く恥ずかしい気分なのです。
なんか、もしかして、もっと他の方法があったのではないだろうか?
俺って、馬鹿をしました?
(俺ッ、恥ずかしい奴じゃんか!もっと他にイイ方法があったんじゃないの!しょうがない彼女さんじゃなくて、まず俺がしょうがない奴じゃないかー!何だよ、もう!俺って何者?!)
顔と耳を赤くして、菜月はワザとらしく咳払いすると食器棚の戸を閉める。
振り返る勇気がなく頭や頬を掻いたり、髪を気にしてみたり、カッターシャツのボタンを気にしてみたり。
居た堪れない気持ちを抱いていると、大声で名前を呼ばれた。
驚いて後ろを振り返ると、風花がカウンターを思い切り乗り越えて飛びついてきた。
菜月は「ちょっとー!」と焦りながら、風花のカラダを受け止める。
此処で力のあるカッコイイ男性ならば、軽々カラダを受け止めるだろう。
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