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「ふ、ふう…かさん…お気は確かでしょうか?」
「…菜月のアレ、どーにか治らないのかな……病気に近いっつーかさ」
「病気は言い過ぎじゃ」
「あたしが此処来た時は、中庭に植物が生い茂っていただけなのに…3年余りで、どーしてこんなことなったのか…ああ、そうか、キッカケは犬か?犬を拾ったことか?あたしがあの時、あの犬を拾おうって言ったことが……原因はあたしか」
ふっ、と薄く笑っている風花は過去と戯れている。
ブツブツ独り言を言っている彼女は「あの頃のあたしにパンチ入れたい」と「犬から爬虫類はないよな」と恐ろしいぐらい暗い声でぼやいている。
あまりの暗さに、あかりは声を掛けることさえ戸惑ってしまった。
そんなに悲惨な思い出を彼女は思い出しているのか。
菜月は普段常識ある人だと思っていたが為にこんな一面があるとは意外だ。
少し考えて、あかりが励ますように風花に声を掛ける。
「せ、説得してワニを諦めてもらいましょうよ」
「…協力してくれるの?菜月、相当手ごわいよ。クネクネの時も、あたしの惨敗だった」
思い出して、風花は盛大な溜息をついた。
手ごわい上に、説得は駄目だったようだ。
そこで、あかりは思いついた。此処で、説得できたら今の風花だったらきっと。
握り拳を作って風花に言った。
「説得できたら、私の借金の残りをチャラにして欲しいんですけど」
「もう、説得してくれたら…それくらい安いもんだ。イイよ。チャラにしてあげる」
簡単にOKを出してくれた風花。それほど、菜月が手ごわいと見えた。
しかし、自分も借金チャラを掴まなければいけない。頑張るぞ!と自分自身に言い聞かせた。
早速カウンターから降りて、2人は菜月が向かった中庭へ。
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