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「ねえ、風花、イイよね?」
「ジョーダンじゃない!もう、植物や哺乳類や爬虫類がウチの中庭にはうじゃうじゃいるよ!菜月、この前は猫拾ってきたし、その前はウサギだろ、その前は……イグアナ…勘弁してよ」
「俺がちゃんと世話するからさ」
「そういう問題じゃないって!ワニって、危ないだろ?!ウチには蛇のクネクネもいるんだ…危険動物増やすなって」


「へ、蛇もいるんですか?!このお店?!」


 しかもクネクネ、なんてセンスのない名前。


 菜月は「大丈夫だって!」とワニを2人に近付ける。
 2人は後退りして首を横に振った。
 ワニが可愛いなんて、菜月の可愛い基準は少しばかりおかしいのでは?…それとも動物好きなせい?


 ワニのことワータンの頭を撫でて、「お庭に行こうね」と菜月が笑っている。


「ちょ、菜月」
「あ!そうそう、植物も買ったんだ」
「ぎゃー!此処にワータン下ろさないで下さいよ!風花さん、悪魔でしょ!殴って気絶させて下さい!」
「む、無茶言うなよ!あたしだって、無理なものが…爬虫類とかすっごく駄目なぁああ?!こっち来たし!」
 
 2人してカウンターの上に避難。
 菜月は大丈夫なのに、と床に下ろしたワータンの頭を再度撫でて、腕に掛けていたビニール袋の中に手を突っ込む。
 鼻歌を歌いながら、ワータンの攻撃を避けながら、菜月はホラ!と植木鉢を取り出した。


「見て見て、可愛い植物でしょ?」

「テレビで見たことが…そ、それ!しょ、食虫植物じゃ」


 そんなの買ってくるなんて悪趣味ですよ。
 あかりは心の中で突っ込んだ。

「サラセニアって言うんだ。凄いよね、こんな小さな植物が虫を取っちゃうんだよ?」
「また、変な物買ってくる…」


 そんな嬉しそうな目をして言わないで欲しい。


 奇怪な植物を買ってきた菜月に、風花は泣きたくなってきた。
 無邪気な笑顔を作るのは大いに結構、嬉しいのも大いに結構。


 ただし!もう少しまともな植物を買ってきて欲しい。


 嬉しそうに食虫植物を眺めている菜月にツッコミたくなった。
 足元で今だに菜月の足を狙っているワータンを後ろから抱きかかえ、「よし行こうね」と中庭に向かう。

「やっぱ飼うの?!菜月!」
「うん!ダイジョーブ、これで最後にするから!」
「菜月はいつもそう言うけど……最後って、あー!ちょっと!」

 中庭へ行ってしまった菜月の後姿を呼び止めるものの、すでに姿はなかった。
 風花はカウンターの上に乗ったまま両膝を突いて、「また増えてしまった」と頭上に雨雲を作っている。


 悪魔が打ちひしがれている。


 あかりは風花に声を掛けたが、風花はドーンっと暗くなっていた。



 あ、哀れ極まりないのは目の錯覚だろうか?

 


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