少年のある一面
買い物に言ってくると菜月は数十分前に店を出て行った。
留守番していた風花とあかりは何事もなく店で寛いでいた。
他愛もない喧嘩なんかして日々平々凡々といつものように平和な時間を過ごしていた。
そんな平和な時間を崩されたのは、菜月のご帰宅。
帰ってきた菜月に口をあんぐりと開けてしまった。
そして2人して悲鳴を上げ、カウンターの物陰に隠れた。
菜月は目を輝かせて手に抱えているそれを見ている。
口元をへにゃと緩めて可愛いと言っていた。
風花とあかりに見せて「可愛いでしょ?」というが、可愛いというより恐いというイキモノが菜月の腕の中に。
「……あれ、ワニですよね。肉食ですよ」
「また菜月は!それ、どーしたわけ?!もしかして…まさか」
「近くの池でね、ワニ捨てようとした人がいたから譲ってもらったんだ。可愛いねー、お前」
キラキラとした目で大きなワニを見つめる。
可愛い、とウットリしている菜月に対し「やっぱり」と風花が額に手を当てた。
動物大好き、植物大好き少年は、時々こうやって悩ましいことをしてくることがある。
好きなのはいいけれど、こうやって度々持って帰ってくるのだ。この少年は。
嬉しそうに笑っている菜月に、カウンターに隠れたまま風花が「戻しておいで」と外を指差した。
しかし、菜月は首を横に振る。
「ヤダよ。捨てられそうになってたんだし」
「あんたね、この店の中庭にどれだけイキモノがいると思ってるの?!」
「この店に…いたんですね。イキモノ」
「一匹増えたぐらい大丈夫だって。ねー、ワータン、今日からお前は家の子だよ」
ワニにワータン?ワニなだけにワータン?
ナイスノーネーミング。
頬ずりしている菜月に、ワータンのことワニは菜月に噛み付くように口を開けてきた。
風花とあかりが、指差して「危ない!」と叫べば菜月は大丈夫だよと攻撃を避ける。
大きなワニの攻撃を避けるなんて「スッゲー」とあかりが呟く。
お化けは駄目なくせにワニは大丈夫なんて。恐るべし、動物好き。
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