*ザワメキに戸惑ったり、可笑しかったり、ね、(風花&菜月)
風花と菜月の過去話。
二人はまだ恋人ではありません。風花は絶賛片思い中です。
* *
俺、女性と殆ど接点の無い生活を送ってきたから、というか他人と殆ど接点なんて無かったから戸惑うことも多い。
例えば、そうだね男女の壁。
風花ったら俺が男だってことを忘れて、目の前で着替えようとしたり、入浴後タオル一枚だけ巻いて家の中を歩いたり、俺の入浴中…勝手に浴場を開けてきたり。大抵、浴槽に入ってる時に乗り込んでくるから、身体を見られるとかどうか…いや別、見られてもいいんだけど。見てもいいものないんだけど。
とにかく戸惑うことばかりなんだ。
寝室に入れば、誰かがいるとか。朝起きて、挨拶を交わすとか。誰かと一緒に食事をする、とか。じいさま以外としたことがなかったから、本当に戸惑うことばっかりだ。
でも俺が1番戸惑うのは、
「絶対さぁ、あの時の主人公の行動は優柔不断! だって思うわけよ。ハッキリ態度で示しゃあいいのに。菜月はどう思う?あたしはぜぇええったい、ハッキリ態度で示さないとあそこの場面はイケなかった思うわけよ」
「う、うーん。そうだね、俺は」
「あのドラマの主人公の女…妙にあたしとは気が合わないっつーか、気持ちが分からないっつーか、微妙に腹立つっつーか。そう思わない?」
「そー…「思うだろ?! やっぱあの女のキャラ、あたしには合わないね!」
ホットケーキを飲み込んで、風花は熱く語っている。俺は呆気に取られるばっかりだ。
だって女性ってこんなに喋りまくる生き物だって知らなかったんだ! 一度(ひとたび)、口を開けば噴水のように次から次へと言の葉が出る出る…留まることを知らないってカンジだ。
風花って朝から晩までこんなカンジなんだから、ほんと、感心しちゃうよ。よくこんなに喋れるなー。
「ねえ、菜月はあの女どう思う?!」
「え? …その主人公の女の人のこと?」
「そぉー!」
「う、ううー…っと、か、可愛いとは思うけど…顔とか…は」
「顔は聞いてないの! 性格だよ、性格! …もしかして、菜月ってあの主人公の女みたいな奴がタイプなわけ? ね? ねえー?」
風花、すっごく不機嫌…なんだけど…。
相変わらず、よく喋るし。
「ああいうタイプの女が好みっつーなら…あたし、あんた好みになってやってもイイケド…」
「風花はそのままでいいけど」
「じゃあ、あの女とあたし、選ぶならあたしってことだよな!」
ふ、風花さん、顔近い!
カウンター越しに身を乗り出して聞いてくる風花に、俺は必死で頷いた。
途端に風花は満面の笑みを浮かべて、残っているホットケーキを口に入れていた。機嫌の良くなった風花に俺もつられて小さく笑った。
銀色の悪魔と一緒に暮らし始めて、まだ戸惑うことばっかりだなぁ。
End
菜月。全く風花のアタックに気付いていません。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!