02
案の定、お兄ちゃん達は広場にいました。
「隊長のおにいちゃーん! 聖保安部隊のおにいちゃーんたち!」
「流聖か」
「お元気ですかー?」
「ああ。お前は?」
「元気です! お兄ちゃん達は?」
「聞かんでイイ」
「え?! 隊長! それはあんまりじゃないですか!」
聖保安部隊のお兄ちゃん達が声を上げていました。
なんだか、恐い顔をしている隊長のお兄ちゃんにぼくは首を傾げてしまいます。
「どーしたんですか?」
「聞いてくれよ。流聖。隊長ったら、俺達を苛めるんだぜ?」
「苛めるんですか?」
「そうそう。僕達は隊長のことを応援してやってるのに、隊長ったら」
「貴様等。そろそろ口を閉じろ。でないと、明日の朝陽どころか、今日の夕陽さえ拝めんぞ」
……聖保安部隊のお兄ちゃん達が黙っちゃいました。
ぼくはこの前、聖保安部隊のお兄ちゃん達の話していたことを思い出して手を叩きました。
「風花お姉ちゃんのことですかー?」
「はあ?!」
「なっ?! りゅ、流聖?!」
あれ?
隊長のお兄ちゃん、耳真っ赤。
聖保安部隊のお兄ちゃん達、顔真っ青。
「聖保安部隊のお兄ちゃん達がこっそり話してたの、ぼく聞きましたから……そうなのかなー? って」
「な、ん、だ、と?」
「聖保安部隊のお兄ちゃん達がですねッ、ウグっ!」
「ッ、あははははっ! 流聖くーん。今日もイイ天気だね」
両手で口を塞がれてしまいました。
あれ? 言っちゃイケナイことだったのかな?
隊長のお兄ちゃんが眉をピクピクと片方だけ動かして、聖保安部隊のお兄ちゃん達を見据えています。
「流聖。こいつ等がなんて言っていた?」
「何も言ってませんよ! あはははー……な、流聖」
聖保安部隊のお兄ちゃん達が冷汗を流しています。
言っちゃ、ダメなのかな?
「流聖。教えてくれたら、今日の見回り連れて行ってやる」
「っ、ぷは! ホントですか?!」
口を塞いでいる手から逃げて、ぼくは隊長のお兄ちゃんを見上げました。
「約束は守る」
「あのですね! あのですね!」
「わああああっ! 流聖!」
「ん? ……貴様等、そこ」
そう言った隊長のお兄ちゃんが地面を指差してきました。
聖保安部隊のお兄ちゃん達が首を傾げて、地面を見下ろします。ぼくも見下ろしたその瞬間、聖保安部隊のお兄ちゃん達から大きな物音が聞こえました。ぼくが顔を上げれば聖保安部隊のお兄ちゃん達が、フラッとその場に倒れて気絶していました。
……何が起きたんだろう?
隊長のお兄ちゃんは、聖保安部隊のお兄ちゃん達に気にすることなく、こっちを見て来ました。
「で? あいつ等がなんて言った?」
「え、あー……『郡是隊長は、こいわずらいー……してるツンデレ』って」
「……ほぉー」
「あと、『ヘタレなんじゃないか?』って」
「ヘタッ、ほぉー……」
「あとですね……『鬼隊長、実は乙女チックなんだ』って」
「乙女……ッ、なるほど。それで?」
「うーっと…『唇を奪ったらいいのに』とか」
「……?!!!」
「隊長のお兄ちゃん?」
「な、なんでもないッ…それから?」
この後、ぼくは洗い浚い隊長のお兄ちゃんに言ってしまいました。
おかげで見回りには連れてってもらったんです! ……聖保安部隊のお兄ちゃん達、ボロボロにされてましたけど。
明日も連れてってくれるって、隊長のお兄ちゃんとお約束もしました。
スッゴク嬉しかったです。
この村に来てから、ぼくは、毎日が楽しくなりました。
そしてぼくは、毎晩のように思うんです。あの時、“聖の洗浄”を受けなくて良かったって。菜月お兄ちゃんの言うとおり、こんなぼくでも好きな人がいてくれるんだって知りました。
菜月お兄ちゃんが風花お姉ちゃん達と遊びに来てくれたら、ぼく、このことをお話しようと思うんです。
まず最初に、
ぼく、今の自分が大好きです! って胸張って言えるようになったことを報告したいなぁー。
End
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