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*憂いては魔性を、そんなクダラナイ事(雅陽&いばら)


 
お互いに性格が似ている雅陽といばらの大人的会話。


 * *
  

「今日は月が見えない」


 闇が好きだと笑う女は窓枠に肘を付けて空を仰いでいた。

 相変わらず媚びた笑いを浮かべるところが、悪魔、いや魔性の女だって思わせる。何を企んでるのか分からねぇな。こういう女ほど、男を餌にして貪っちまうんだろうな。恐ろしい女。
 そういや、いつも金魚のフンみたいに引っ付いているチビナイトの姿が見当たらない。散歩かどっかに行ってるんだろうな。俺の知ったことじゃねぇがな。俺が部屋にいるだけで威嚇してやがるし。部屋提供してやったのは俺だぞ?無理やり連れてきたのも俺だがな。
 

「今日は月が見えない」


 二度目だその台詞。
 月が見えない見えないって、月が好きなのかよ。
 俺の問いに歪は「びみょー」って返答してきやがった。「びみょー」なのに見えない見えない言ってるのかよ。

「好きでもない嫌いでもない。フツーってことー。あーんたは好き?」
「別にどーでもいい」
「だろうね。あんた、そーゆーの興味無さそう」
「全くねぇな」
「あーあ。月みえなーい」

 まるで月を待ち焦がれてるように、何度も何度もなんども見えない言いやがる。
 結局好きなのか、嫌いなのか、ハッキリしねぇな。ああ、だからフツーって答えたのか。曖昧な返答だな。
 
「だったら月が出たらお前はなんて言うんだ」
「今日は月が出てるのかー、ツマンナイ」
「何だそりゃ」
「その日の気分、我儘なの、あーたしって」
「本当にな」
「でもー月が出てる空は嫌いじゃないよぉ?」
「あ? お前が?」
「意外な顔してくれるねぇー。嫌いじゃないよぉ、だって月光が地上を照らせば」


 より一層、闇は深く見えるのだから。


 こんなに艶かしい笑みを作れるのは、何処を探そうともコイツしかいないだろうな。
 コイツの言うこと、クダラナイことだが俺は嫌いじゃねえな。


 窓枠に手をついて歪の顔を覗き込んで言ってやった。


「お前、ホント何考えてるか分からねぇな」
「あーんたもね。なーに企んでるか分からないし」
「そうか?」
「嘯くわけかー。だからあんたは読めない」
「互い様だ」
 
 嘯くのはお前だってそうだろ。
 俺の言葉に歪が意味あり気に笑った。食えない女。
 一夜ぐらいお供して欲しいもんだな。どうやったらこの女、落とせるか。

「互い知る為に恋愛ごっこしてみるか?」
「恋愛ごっこ? どーんな遊びぃ? 大人のおままごとみたいな感じぃ?」
「面白ぇかもしれねぇぞ?」
「恋愛ごっこねぇ。考えとーく」

 考える気ないくせに、期待させる素振り。完璧魔性の女だな。
 
  
 散歩からのお帰りかチビナイトの威嚇する声が聞こえてきやがった、俺は無視した。
 どうせ数秒後に邪魔してくるだろうしな。
 

 End



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