8-15
「ジェラール。もしかして一日中、看病をしてくれていたのかい?」
「当たり前よん。熱に魘されているネイリーをひとりに出来ないわ。おかげでネイリーの寝顔を長い時間見れて、もうジェラール幸せ」
身体をくねらせるジェラールに、ネイリーは冷たい汗が背中を伝ったような気がした。
空笑いしながらも、ネイリーはジェラールに詫びた。
自分のせいで彼女はほぼ徹夜だっただろう。
するとジェラールは可笑しそうに笑いを漏らした。
「気にしないのん。それにたまには良いんじゃないかしら?看病されることも。貴方はいつも、看病する側に回ってたから」
こういう風に誰かに心配され、看病されるのも悪くないのではないか。
ジェラールの言葉にネイリーは少しだけ目を瞠った。そして目を細めて口角を緩める。
「そうだな。たまには良いかもしれない」
目を閉じてネイリーは過去のページを捲る。
過去、自分はいつも最愛の妹の看病をしていた。苦ではなかった。
寧ろ傍にいないと不安に感じるほどだった。
妹の苦しんでいる姿を見たくないから、いつも傍にいて看病して。
病弱な妹に笑ってもらいたいから、喜んでもらいたいから、薔薇を買ったり、話し相手になったり、絵本を読んだり…本当に色々なことをした。
そう…いつも自分は看病する立場にいた。
ノックする音が聞こえた。
ジェラールが返事をすると、部屋にガイコツのスケルちゃんが入ってくる。頭につけている大きな桃色のリボンが今日も綺麗に結ばれていた。
スケルちゃんは歯を鳴らしながら、手に持っている受話器をジェラールに渡してくる。
「カクカクカク」
「あらん?電話?誰からなの?」
「カクカクカク」
「あかりから?分かったわ」
ジェラールが受話器を受け取り「もしもし」と呼び掛ける。
微かにだがあかりの声がネイリーの耳に聞こえてきた。
何と言っているのか分からないが、確かにあかりの声。
きっと自分を心配してきて電話して来てくれたのだろう。
有り難いやら申し訳ないやら、気持ちが入り混じってしまった。
「今さっきネイリー起きたの。ええ…ええ……分かった、聞いてみるわぁ。ねえ、ネイリー」
「何かね?」
「明日、あかりが風花達と一緒にお見舞いに来てくれるってん。何か買ってきて欲しいものはあるか?って」
「そんな悪い気が…」
ジェラールが優しく目を細めてきた。お言葉に甘えろと自分に言ってきてくれる。
ネイリーはフッと笑みを浮かべて考えた。何を買ってきてもらおう。
少し考えてネイリーは思いつく。
「ゼリーをお願いしようかな。蜜柑ゼリー」
「分かったわぁ。もしもし、あかり。ネイリーが蜜柑ゼリーをお願いしてるわ」
ジェラールの声をBGMにしながら、ネイリーは思い出す。
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