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看病する、ではない、される側

  
 * *

 ひんやりとした物が額に乗せられたような気がする。
 意識を浮上させたネイリーがゆっくりと目を開けると、キャロット色がぼんやりと視界に飛び込んできた。
 朦朧とした意識の中でネイリーがそれか何か考える。


 キャロット色のそれは、友・ジェラールの髪の色だと暫くして判った。


 ジェラールが自分の方を見てくる。
 自分が目を覚ましたことに気付き、優しい眼を向けて微笑してきた。
 些か熱い視線を向けられた気がしたがネイリーは気だるかった為に、妙な汗は出たが気付かないフリをした。
 
「おはよん。調子はどう?」
「……ここは」
「ネイリーの寝室よん。ネイリー、冬斗の血を飲んだ直後倒れたの」


 倒れた?


 朦朧とする意識の中で、ネイリーは瞼をそっと下ろす。
 そういえば、最後に残っている記憶は冬斗の焦った姿だったような……そうか、自分は倒れたのか。
 たかだか風邪で無様にも倒れるなんて、普段カッコイイ自分でも今回ばかりはカッコ悪く感じた。
 
 ネイリーの心中を察したのかジェラールは「そういう日もあるわぁ」と笑ってきた。
 弱弱しく笑みを返しネイリーは上体を起こそうとする。
 しかし、ジェラールがそれを制して寝るように強要してきた。

「まだ熱あるんだから。早く元気になりたかったら、ゆっくり寝ましょん。風花達、心配してたわぁ」
「フロイライン達が?」
「だってぇ。ネイリー倒れたのよ?やっぱり心配するわよ」

 気を失ったネイリーをおぶって応接室から出てきた冬斗は、「ネイリー先輩が」と困ったような顔を浮かべていた。
 声を上げて慌てたのはあかりと風花。
 気を失っているネイリーに「救急車?!」とパニックを起こしてた。
 自分も少々パニックを起こしていたが、それ以上にネイリーの体調を診なければ…とあかり達のようにパニックは起こさなかったと言う。
  
 皆、ネイリーが倒れたことに心配していた。


 ジェラールの話にネイリーは微苦笑した。


「それはすまなかったな。後日、皆に謝らなければ」
「そう思うならゆっくり休養を取って元気なることねん。さっき菜月から電話があってね、『ネイリーさんの体調はどうですか?』って連絡くれたのよん」
「僕はそれほど眠っていたのかい?」
「ほぼ丸一日寝ていたわぁ」

 ネイリーの額に置いてあるタオルに手を当てる。
 もうタオルが生温くなっていることから、まだ熱が高いことを教えてくれる。
 洗面器にタオルを放り込むと、静かにタオルをひたすジェラールの姿をボンヤリ見ながらネイリーは口を開いた。



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