8-11
颯爽とチャリを飛ばし、殺伐とした空き地を抜けた冬斗は“何でも屋”にいつもの半分の時間で到着した。
“何でも屋”の目の前にチャリを置き、冬斗は扉に手を掛けた。
しかし扉を開けようとした時、絶叫が聞こえた。
この世の終わりのような悲鳴に冬斗は、思わず扉を開けるのを躊躇ってしまう。
「って、ビビッてる場合じゃねぇって!」
軽く頭を振って冬斗は扉を開けた。
心地良い鈴の音が冬斗の耳に入ってくるが、それ以上に菜月の悲鳴が聞こえてくる。
出入り口で足を止めた冬斗は思わず持っていたチャリの鍵を落とした。
「ジェラール!だからッ、ダーリンは無理だって!」
「止めないで風花!ネイリーがこんなに酷い状態なのよんッ、一刻を争うわ……さあ!ネイリー!ヤっちゃうのよん!この際、ふくらはぎを噛み付いて少しでも血をもらうのよん!苦しさも半減する筈よん!」
「ゴッホゴホゴホ……しかし」
「ギャアアアア!死にたくなーい!」
「菜月!冬斗が来るまでの辛抱だからん!」
目の前に映った光景は、ジタバタと暴れている菜月を羽交い絞めにしているジェラール。
それを止めている風花。咳き込みながら困り果てているネイリーに、どうしようと店内を歩き回っているあかり。
異様な光景極まりない。
菜月は火事場の馬鹿力を出してジェラールの手から逃げ出す。
逃げられたことにジェラールが追い駆けようとした時、冬斗の姿を見つける。
目を輝かせてジェラールは冬斗に猛突進する勢いで突っ込んだ
「冬斗!来てくれたのねんッ!ネイリー!」
「うわっ、なんっすか?!」
羽交い絞めにされた冬斗は、ワケも分からず後ろを振り返る。
ジェラールは「大丈夫だから!」と強く言って、ネイリーに冬斗を差し出す。
「さあ!ネイリー!」
「う、う、うー…む、ケッホケホ」
「躊躇わず!一発で!」
何かを催促するようにジェラールがネイリーに言っている。
混乱に混乱している冬斗は叫び声を上げた。
「まず俺に説明してくれー!」
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