8-6
「な、菜月?!ゲッホゲホ」
「あ〜も〜……ダメェ……むりぃ」
目を回している菜月は、恐怖のあまりに気を失ってしまったようだ。
そんなに恐かったのだろうか。気を失うほど恐かったのだろうか。
何だかショックを受ける。物凄いショックを受ける。
というかもう、へこむ。
倒れてしまったことに、後ろを向いていた風花はバッとこっちを見て菜月に駆け寄った。
「ダーリン!しっかりしろー!」
「あちゃー。菜月くん、ノックダウンのようですね。あ、でも、今の内なら大丈夫なんじゃ」
「ネイリー!早く飲んじゃうのよん!」
「ウ、ウ、ウーム」
何だか気が引けるが血を飲まなければ風邪は治らないだろうし。
ネイリーは気を失っている菜月に合掌して片膝を折った。
すると、菜月がハッと目を開けて素早い動きで上体を起こすと状況を確認。
そしてネイリーと顔を合わせて半泣きになった。
「やっぱりごめんなさいッ。無理です。無理ッ。うわあああん!ふーか!」
風花に泣きつく菜月は情けないこと、この上ない。
困ったように風花は慌てふためきながら「ダーリンは頑張った頑張った」と頭を撫でる。
グズグズと泣く菜月は風花に抱きつき「俺には無理なんだよー」と落ち込んでいる。
抱きつかれたことは、あたしの特権じゃ!と、思いながら風花は菜月を慰めていた。
ホラー&オカルトダメダメな菜月を無理強いさせるのは、不可能に近いようだ。
あかりは「やっぱり私が」とネイリーに視線を向ける。ネイリーは勢いよく首を横に振って遠慮した。
女性に噛み付くぐらいなら風邪で野垂れ死んだ方がマシ!と、ネイリーは断固拒否する。
紳士的考えでとても良いと思うのだが、途中途中咳き込まれながら言われたら説得力の欠片もない。
血色の良いネイリーにジェラールは涙ぐみ、仕方ないとヒーリングレイピアを召喚する。
何をするのか?と、思ったその瞬間、爆弾発言をした。
「人間界には人間がいっぱいいるのよん!1人ぐらい掻っ攫っても大丈夫!」
「犯罪めいた発言ヤメて下さい!」
「この地球(ほし)には人間が沢山いるのよー!別に1人ぐらい掻っ攫って血を頂戴しても、神様だって笑って見過ごしてくれるわぁ!」
「捕まっちゃいますよ!」
「ネイリーの為なら豚小屋もどんと来いよん!さあ、行くわよん!」
とんでもないことを言い出したジェラールに、あかりは必死で宥める。
しかし、ジェラールの目は本気だ。
「ジェラール、犯罪者にだってなるわぁ!ネイリーの愛は不滅なんだからぁん!取り敢えず、銀行から狙いましょ!」
「強盗でもするつもりですか?!」
「人の集まりそうなら何処でも良いわぁ!コンビニでも、スーパーでも、デパートでもッ、一刻を争うのよん!」
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