8-5
「ネイリー。やるならさっさとやって。じゃないと、菜月の神経の方が持たないから」
「ゲッホゲホ。しかし」
グズグズと洟を啜っている菜月を見下ろし、小さく溜息をつく。
やりにくい。非常にやりにくい。
咳き込みながら、ネイリーは菜月に「大丈夫だから」と子供を落ち着かせるように優しく言う。
少し落ち着きを取り戻したのか、菜月は頷いてボソボソと呟く。
「じゃ、じゃあ、ど、ど、ど……どうぞ」
「ウーム。そ、それじゃあ、遠慮なくッ……ゴッホゴホ」
何故、血を飲むだけなのに疲れるのだろうか。
しかも、自分は病人なのに。
咳き込みながら、ネイリーが菜月の首筋にどう噛み付こうか考える。
後ろから回ってサッとやってサッと終わらすか。
そっと犬歯を見せれば、菜月が悲鳴にならない悲鳴を上げる。
なんか良心が痛んで仕方がないのだが。
自分が苛めているような気分を味わい、ネイリーは風花達の方に目をやった。
「すまないが、後ろを向いていてもらえるかい?何だか、遣り難くて」
「あ、分かりました。風花さん、ジェラールさん」
あかりの言葉に風花とジェラールは後ろを向いた。あかりも後ろを振り向いて「さあ!どうぞ!」と催促する。
ネイリーはサッサと終わらせよう。
そう心に決めて、菜月の方に目をやった。
「では菜月。直ぐ終わらせるからな」
キランと真っ白な犬歯を再び見せる。
すると菜月がまた悲鳴にならない悲鳴をあげ、そのままグラリと身体が傾き、その場に倒れてしまった。
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