8-4
菜月は唸り声を上げながら、テーブルの脚から手を離した。
どうやら折れたようだ。
グズグズと泣きながら、テーブルの下から出てくる菜月にジェラールは満面の笑顔を作った。
「ダンケ。貴方は選ばれた生贄……コッホンッ、勇者よん」
「え、え、選ばれたくなかったですッ。お、俺、まだこの世に未練がッ、沢山あるのにぃ」
「死ぬわけじゃないんですから。菜月くん」
「っつーか、死なせたらあたしが赦さん!大丈夫、ダーリン!あたしがついてる!」
励ましのお言葉を貰い、菜月はグズグズと泣きながらネイリーのもとに行く。
ネイリーは咳き込みながら、ニッコリと笑い「すまない」と詫びた。
「直ぐに終わらせるッ、ゲッホゲホゲホ」
「か、風邪なら仕方ないですからッ……じゃ、じゃあ、どうぞ」
右人差し指を出してくる菜月に、ネイリーは「人差し指噛み付くのは…」と口ごもる。
菜月はグズグズと洟を啜って右腕を捲くり、腕を差し出す。
「ゴッホゴホ……菜月。噛み付くのは首筋なんだが」
「う、う、腕からじゃ無理なんですか?」
「無理と言うことはないが、デキれば首筋が良いというか」
言った途端にまた菜月はジワジワと目を潤ませて、グズグズと泣き出す。
「お、お、俺。ほ、包丁で腕刺して血を出してきますからッ、勘弁じでくだざい」
「いやいやいや!それこそ僕が勘弁さッ、ゲッホゲホ」
「だっで、ぎゅうげづぎにッ、がみづがでるだんで」
濁音だらけで何言ってるか分からない。
やっぱり無理だよと嘆いて、菜月は風花の元にトボトボと歩み寄る。
「ふ、ふーが。俺、無理だっで。無理ぃー!!!」
「だ、大丈夫だって菜月。注射してもらうって思えば気が楽だろ」
頑張れと菜月の背中を押して、ネイリーの元に戻らせる。
ネイリーは少しならずショックを受けていた。
そんなに恐いだろうか?自分って。
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