[携帯モード] [URL送信]
恐がり少年から血を頂けるのか?!

  

 予感は的中してしまった。
  
 
 普段、菜月はネイリーのことを害のない奴だと思っていても、吸血鬼の本性を見せると恐がってしまうのだ。
 ホラーやオカルト嫌いな菜月にとってしてみれば、吸血鬼から『血をください』なんて恐怖以外のなんでもないだろう。


 風花はそれが分かっていたからこそ、無理じゃないかと思っていたのだが、やっぱりこうなると思った。
  

「だ…ダーリン。出て来いって。ネイリーも悪気があって言ったわけじゃないんだよ」

「ううううぅぅぅ……ヒッグッ、うぞだぁぁあ」

「事情があるんだって。取り敢えず出て来いよ。ね?」


「だぁーっで!血が欲しいって言ったんだよッ…吸血鬼、恐いよぉおおお!」


 テーブルの下に隠れてしまっている菜月は、テーブルの脚にしがみ付いて涙ぐんでいる。
 というか男泣き寸前、男泣き一歩手前。

 風花はしゃがんで必死に菜月を宥め説得している。
 「出て来いよ」言う度に「嫌だ嫌だ」と嘆き喚き、首を横に振ってテーブルの脚にしがみ付いている。

 あかりとジェラールは困ったなぁ…と、ネイリーの方を見た。

 相変わらず血色の良い顔色をしてとても健康的そうだが、実際はかなりシンドそうだ。
 ジェラールは愛するべき人の為に!と、意気込んでテーブルの下に隠れてしまっている菜月に声を掛ける。
 
 
「菜月。ネイリーね、風邪をひいてるのよん」
「ヒッグ……風邪?でずが?」
 
「そうなのよん。原因は貧血でね、人間の血が必要なんだけど……ホラ、ネイリーって女性には手出しできないでしょう?だからあかりじゃダメなのよん。そうなると菜月しかいないの。だからお願いよん。出てきてネイリーの餌食となってちょうだい」

 
 いや、餌食って……他の言い方あるだろ。


 風花とあかりが心の中でツッコミを入れ、菜月は「餌食って何ですかー!」と喚いている。
 しかしジェラールは自分の両手を握り、真っ直ぐに菜月を見つめキラキラと期待の眼差しを送った。
 男泣き一歩手前の菜月はその目を見て、「ウッ…」と言葉を詰まらせた。

 
「で、でも、俺…」

「ジェラールの大事な大事な大事な大事なネイリーがピンチなのよん。菜月、お願いよん」


 血を飲まれる俺だってピンチなんですけど。
 大ピンチなんですけど。
 ボソボソと呟いて反論してみるが、ジェラールはただ真っ直ぐに菜月に期待の眼差しを送る。


 断れない眼、雰囲気、そして追い詰められていく感覚。



[*前へ][次へ#]

4/17ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!