恐がり少年から血を頂けるのか?!
予感は的中してしまった。
普段、菜月はネイリーのことを害のない奴だと思っていても、吸血鬼の本性を見せると恐がってしまうのだ。
ホラーやオカルト嫌いな菜月にとってしてみれば、吸血鬼から『血をください』なんて恐怖以外のなんでもないだろう。
風花はそれが分かっていたからこそ、無理じゃないかと思っていたのだが、やっぱりこうなると思った。
「だ…ダーリン。出て来いって。ネイリーも悪気があって言ったわけじゃないんだよ」
「ううううぅぅぅ……ヒッグッ、うぞだぁぁあ」
「事情があるんだって。取り敢えず出て来いよ。ね?」
「だぁーっで!血が欲しいって言ったんだよッ…吸血鬼、恐いよぉおおお!」
テーブルの下に隠れてしまっている菜月は、テーブルの脚にしがみ付いて涙ぐんでいる。
というか男泣き寸前、男泣き一歩手前。
風花はしゃがんで必死に菜月を宥め説得している。
「出て来いよ」言う度に「嫌だ嫌だ」と嘆き喚き、首を横に振ってテーブルの脚にしがみ付いている。
あかりとジェラールは困ったなぁ…と、ネイリーの方を見た。
相変わらず血色の良い顔色をしてとても健康的そうだが、実際はかなりシンドそうだ。
ジェラールは愛するべき人の為に!と、意気込んでテーブルの下に隠れてしまっている菜月に声を掛ける。
「菜月。ネイリーね、風邪をひいてるのよん」
「ヒッグ……風邪?でずが?」
「そうなのよん。原因は貧血でね、人間の血が必要なんだけど……ホラ、ネイリーって女性には手出しできないでしょう?だからあかりじゃダメなのよん。そうなると菜月しかいないの。だからお願いよん。出てきてネイリーの餌食となってちょうだい」
いや、餌食って……他の言い方あるだろ。
風花とあかりが心の中でツッコミを入れ、菜月は「餌食って何ですかー!」と喚いている。
しかしジェラールは自分の両手を握り、真っ直ぐに菜月を見つめキラキラと期待の眼差しを送った。
男泣き一歩手前の菜月はその目を見て、「ウッ…」と言葉を詰まらせた。
「で、でも、俺…」
「ジェラールの大事な大事な大事な大事なネイリーがピンチなのよん。菜月、お願いよん」
血を飲まれる俺だってピンチなんですけど。
大ピンチなんですけど。
ボソボソと呟いて反論してみるが、ジェラールはただ真っ直ぐに菜月に期待の眼差しを送る。
断れない眼、雰囲気、そして追い詰められていく感覚。
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