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血色の良い吸血鬼

  
 
 吸血鬼、というイキモノは常に血色が悪いらしい。
 
 
 いつもいつも顔を合わせる度、青白い顔をしている為に具合が悪いのか?と思ってしまうほどだ。
 しかし彼等にとって青白い肌は健康的な証拠らしく具合が悪いということは全くない。
 
 寧ろ、その逆が具合が悪いらしい。

 セントエルフのジェラールと共に“何でも屋”訪れた吸血鬼、ネイリー・クリユンフはとても良い血色の肌をしていた。
 普段から顔見知りの人達が驚くほど、良い血色の肌をしていた。



「はあ?風邪ひいたわけ?あんた」

「そうなッ、ゲッホゲホ……そうなのだよ。フロイライン」
  
 
 掠れた声でネイリーはダルそうに返事を返した。
 ジェラールが心配そうに背中を擦っている中、風花と“何でも屋”に遊びに来ていたあかりは顔を見合わせた。
 
 顔色がかなり良く健康的そうに見えるが、吸血鬼にとって血色の良い肌ほど体調不良らしい。
 咳が酷く、何度も咳き込んでいるネイリーに風花は少し呆れながら「家で寝とけばイイじゃん」と一応心配した。
 いつもならば「心配してくれているんだね!フロイライン!」と飛びつくところなのだが、元気がないのか曖昧に笑うだけだ。

 
 飛びつかれてもウザイだけなのだが、これはこれで調子が狂う。

 
「ネイリーさん。大丈夫ですか?風邪薬とかは」
「フウム、市販の薬は飲んだのだがね……どうも効かなくて」
「ジェラールの調合した薬でも、やっぱり効かなかったのよ」
「え?!ジェラールさんの薬でもですか?それってやばくないんですか?」

 ますますあかりが心配する。
 ジェラールは「原因は分かってるのよ」と苦笑いしてネイリーを見た。
 
「ネイリーはね。貧血なのよ」
「貧血?あのビタミン不足とか鉄分不足とかが原因で立ち眩みとか起こす……あれですか?」
「それは人間の場合の貧血ねん。ネイリーの場合、血液不足なのよん。ホラ、ネイリーは吸血鬼でしょう?」


 確かにネイリーは吸血鬼だ。


 血を飲む生き物として知られているが、ネイリーは風花を賭けて菜月と勝負に敗れた後は血のことなんて一切触れていなかった。だからネイリーが血を飲むというイメージがあまり湧かない。
 ジェラール曰く、風邪の原因は血液不足だという。
 だから薬を飲んだとしても、そう簡単には風邪は治らないらしい。
 
「だったら血を飲むべきじゃない?あたしの、仕方ないからあげてやってもイイけど」
「ジェラールや風花の血じゃダメなのよん」
「え?どうして?」


「吸血鬼の飲む血は魔力を含んでいない血なの。つまり人間の血ねん。ジェラールや風花の血を飲んだら、自分の魔力と相手の魔力がごちゃごちゃと混じって体調を崩しちゃうわぁ」


 意外と吸血鬼はデリケートらしい。


 ジェラールは「もしもジェラールが人間だったら、直ぐにでも助けてあげたのに!」と後ろからネイリーに抱きつく。
 ネイリーの血色の良い肌が更に血色良くなる。

 どうやら、後ろから抱きつかれてショックだった模様。

 本来ならば避けるところなのだが避ける元気もなく抱きつかれたことに、どんよりと落ち込んでいる。
 


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あきゅろす。
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