6-19
「わ、私も……あの、林道さんのように、麻人さんにしてもらいたいな」
「え?!小波さん。それは」
ちょっと照れている麻人に小波は手遊びを止めて顔を上げる。
「私。そこに座ってるので麻人さん。どうぞ飛び込んで来て下さい」
瞬間、麻人がピシリと固まる。
受け止める役、自分じゃないのか。寧ろ飛び込む役なのか。それは無理だろ。絶対無理だろ。出来ないだろ。
「大丈夫です。私、麻人さんを頑張って受け止めます!」
「是非、俺が受け止める役をしたいんだけど……小波さん」
「頼り無さそうに見えるでしょうけど、私、頑丈です!」
「いやいやいや、小波さん。俺が言いたいのは」
両手を広げて目を輝かせる小波に対し、説得を試みようとする麻人。
夫婦になる2人の会話を聞きながら、風花はクスリと笑い声を漏らす。
あたしは、ずっとずっと安らぎが欲しかった。癒しが欲しかった。
誰かに認められたくて、誇れる居場所が欲しかった。
だから、色んな男と付き合った。適当に男と付き合った。
それは今思えば、無意味なことだったのかと思ったけど、そうでもなかった。
塩峪のように、関係の形は違えどちゃんと後々分かり合えるようになることだってある。
あの日々は、無駄ではなかったんだ。
虚しさが残ってばかりのあの日々でさえ、無駄でも無意味でもなかった。
そう思えるようになったのは、あたしが変われたから。
変われるキカッケを作ってくれたのは……菜月、あんたのおかげさ。
でもさ、あたし、安らぎも癒しも誇れる場所がデキたことよりも、あんたと出逢ったことが、ホントスッゴク大切なことだって知ったんだ。
―――今のあたしが在るのも、あんたと出逢ったあの雨の日から、全てが始まったんだから。
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