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決して無駄じゃなかった

  
 微笑して風花は窓の方に目をやる。
 2月の海だというのに、綺麗に青々と海が輝いて本当に綺麗だ。これも神様が自分の誕生日だからと云ってプレゼントしてくれたのだろうか。


 塩峪のことだって、最初は最悪と思ったけれど、今日再会してデキて良かった。

 何故なら、あんなに自分を臆していた彼が今こうやって自分と向き合ってくれた。


 自分が素を見せなかったのも悪かったし、彼自身を自分も見ようとしなかった。
 それでも塩峪はまだ、自分を恐いと思っているかもしれない。

 それは仕方がないこと。

 でも、今から友人として歩み寄ればイイ。
 ツッパるのではなく、相手のことを心許して接してみよう。
 魔界でデキなかった何気ない普通の会話も楽しんでみてもイイかもしれない。


 きっと魔界の思い出を話せば、彼は嘆くだろう。
 それをあしらいながらも、今の自分なら会話を楽しめる筈。
 
 

「林道。料理デキたぞ。座れよ」

 
「あ、おう。今行く」

  

 元カレの麻人に微笑し、風花は自分の座るべき場所へ向かう。
 いや、自分の座るべき場所ではなく、助走をつけ、風花は勢いよく自分自身を最初に認めてくれた奴へ突っ込んだ。


「愛のハニータックル!」

「えっ、ぎゃあああ!たんまっ!風花さッ、アッダー!」


 椅子から床に凄まじい音を立てながら転げ落ちる菜月と共に風花も床に転がる。
 麻人が「おいおいおい」と微苦笑し、小波が手を叩いて「仲良しですね」と喜んでいる。
 高校生組は「あちゃー」と声を揃えて、床に転がった風花と菜月を見下ろす。


 風花の下敷きになった菜月は、見事に後頭部を強打して目を回していた。


 笑い声を上げて風花は仰向けになった。
 
 
「どうだ。あたしの愛のパワー。菜月には負けないよ?あんたを想う気持ち」
「告白をしているとこ悪いけど、お前の彼氏。気絶してるぞ」
「身をもって分かってくれたって」


 といってもな。
 哀れな姿になっている菜月を見下ろしていると、小波がモジモジと手遊びしながら口を開く。



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