Parallel
8
「……名雪。……帰ったんじゃなかったのか?」
チッ、と舌打ちし、志藤さんは、忌々しげに呟いた。
「…んー。…ほっとこうかと思ったんだけどねぇ。可愛いニャンコが食われるの見過ごしたら、総長に殺されちゃうしぃ。」
愉しげに笑い、飄々と言ってのける名雪さんを、志藤さんは嘲笑う。
「…そんな殊勝なタマじゃねーだろ。」
「はいはい。…いーから、その子渡して。事を荒立てたくは無いっしょ?……まだ。」
最後につけ加えられた、低い呟きに、志藤さんは短く嘆息し、オレを名雪さんに、渡した。
「……………今度は、もうアイツの名前は、呼ばせないからね?」
手放す瞬間、耳元に囁かれた言葉に、オレは小さく体を揺らす。
ぼんやり見上げた先の彼は、酷く綺麗な…けれど歪んだ瞳で微笑んでいた。
そのまま去っていく志藤さんを見送る頃には、オレはもう意識を保っていられずに、申し訳ないと思いつつも、名雪さんに寄りかかった。
「…おーい。オレ相手に安心してるんじゃないよ、子猫ちゃん?」
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