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可愛いヒト。A[静凛]





「…っひ、ぁああっ!」


ビクン、と体が、陸に打ち上げられた魚のように跳ねる。


オレは悲鳴じみた嬌声をあげながら、何度目かも分からない絶頂を迎える。


「…っ、」


肩で息をしながら、快感の余韻に小刻みに震えつつも、ぼんやりと視線をむけると、オレのものを口にくわえたしずかちゃんの喉元が、コクリと上下するのが見えた。


……飲まないでよ、なんて言葉も紡げない。

だってもうこれ、何度目?


何度も何度もイかされて、その度飲まれてちゃ、イチイチ突っ込む気力も尽きるよ。いや、飲まないで欲しいけどね。恥ずかしいから。


しずかちゃんは、未だにオレのものから口を離す事無く、最後の一滴まで絞り出すように、丁寧に吸い上げた。


「……っ、」


その快感に耐え、終わるのを待っていると…


クチュ、…ジュ、
「ひぁっ…!?」


しずかちゃんは、再びオレのものに愛撫をくわえ始める。


漸く終わりかと思ったのにっ!!


「やっ、し、ずか、ちゃ…!!」


ハニーブラウンの髪を掴み、なんとか離させようとするが、全く力が入らない。

しずかちゃんは、欲望に濡れた目を眇め、一旦唇を離したが、オレがホッとする間も無く、裏筋を舌でベロリと舐め上げる。


「ひゃっ!?…っ、…ふぁっ、」


痛いくらいの快感を、休みなしに与えられ、震えるオレの目からは、生理的な涙がこぼれ落ちた。


「…ダメ……、…おかしく、なる…っ、」


そう途切れ途切れに呟くと、しずかちゃんは、嬉しそうに笑った。


喉を鳴らして、うっとりと笑う彼は、まるで人でないような壮絶な色香を纏う。


「…なって、りっちゃん。狂ってよ、オレに。」

「…え?」


目を瞠ったオレに、しずかちゃんはすぐに凄艶な笑みを苦笑にかえた。


「………なんて、夢じゃないと言えないなんて、情けないけど。」


…夢じゃない。

そう言うのは簡単だけれど、オレはしずかちゃんの本音を、ちゃんと聞いておきたい、と思った。


「……しずかちゃん、我慢してるの…?」


オレが、いつも気になっている事を聞いてみる。

オレ達は、清い関係ではないけれど、その…こーゆー事をする頻度は、少なめだ。
しかも大抵一回で、且つしずかちゃんは、気を遣い過ぎるくらいに遣ってくれる。


オレが、彼の頬をそっと両手で挟み訊ねると、

しずかちゃんは、困惑したように眉を下げた。


「……りっちゃんと触れ合うのは、凄く気持ち良くて、幸せ。それは嘘じゃない。…………でも、オレの中の醜い部分が、もっとって叫ぶんだ。」


しずかちゃんの頬を包むオレの手に、しずかちゃんは、自分の手を重ねた。


「もっと、もっとぐちゃぐちゃにして、オレに溺れさせたい…オレから離れられなくなる位に。」

「……………。」


オレが際限まで目を見開くと、しずかちゃんの顔が自嘲気味に歪む。


「……怖いよね、汚くて重くて、本当、どーしよーもない。……でも、隠すから、絶対傷付けないから、…だから、オレを……」


泣きそうな顔でしずかちゃんは、小さく呟く。


かき消えてしまいそうな微かな声で、



『捨てないで』、と。



「…しずかちゃ、…!?」


名を呼ぶ途中で、しずかちゃんは、ふっ、と意識を失い前のめりに倒れてきた。


「重っ…」


ガシッ、と受けとめたはいいが、如何せん、体格が違い過ぎる。
ズルズルと一緒に後ろに倒れるハメになった。

抱き抱えた体は、当然熱い。熱、下がってなかったもんなぁ。


マンガだったらぐるぐる目を回してそうなしずかちゃんに、オレは笑って触れるだけのキスをした。


なんて可愛い人。


オレが大事過ぎて、自分の欲望押し殺して、
でも熱でタガが外れて軽く暴走。


こんな可愛い人、捨てるわけないのに。


しずかちゃんなら、どんな強引に抱かれても、最終的には許しちゃうのに。
それくらい、メロメロなのに、そんな心配しているなんて、

本当に、可愛い恋人。


布団をなんとか引き寄せて、オレは彼にかけてあげながら、もう一度、チュ、と、

今度はおやすみのキスを贈る。


はやく良くなって。


きっと貴方は、夢だと思っているだろうけど、
もしくは覚えていないのだろうけれど、


もう、なかった事にはしてあげない。


しずかちゃんが、オレが大事過ぎて動けないなら、


寧ろオレが、

襲ってしまおう。
(覚悟はよろしいですか?)
(ねぇ、愛しいあなた。)


END

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